工場の生産を数学的に管理する
どれくらい作るか
注文ごとの要望に合わせた機械を作る工場では、すべての注文に共通する部材に関しては、ある程度の注文を見越した量を途中段階まで製造してためておきます。もし、ためた量よりも注文が少なければ、作り過ぎてしまった分は一定期間が過ぎると廃棄処分にせざるを得ません。反対に、ためた量より注文が多くなってしまうと、その部材を一から作ることになって時間がかかるため、納期が間に合わなくなる可能性も出てきます。こうした製造工程の管理や材料の調達をうまく行う必要があり、これを「生産管理」と呼びます。
数学的な定量化
これまで多くの生産現場では、生産管理は長年勤めた担当者の経験と勘に頼って行われていました。しかし、それでは担当者が世代交代する際に、生産管理の継承が難しくなってしまいます。そこで、生産管理を数学的なアプローチで定量化する研究が進められています。例えば、1カ月ごとの生産能力や安全在庫と呼ばれる工場にためておきたい数量、需要の予測値などを数式にします。さらに、その数式について、計画時点での在庫量を一つの変数として入力して実際の需要量や品切れ量を差し引きするなど、パラメータを変化させながら生産のシミュレーションを行い、適切な生産計画を導きます。
日本の製造業の課題
現在は、大企業などでは生産管理ソフトなどを導入した自動計算が行われています。一方、高額な設備投資が行えない中小企業では導入はあまり進んでいません。日本の経済成長における課題の一つは生産性の低さであり、製造業では99%以上を占める中小企業の効率性の改善は大きな課題となっています。
そんな中、数学的なアプローチによる定量化をすることで、Excelのような汎用(はんよう)計算ソフトでも運用が可能になるため、中小企業への数学的な生産管理の浸透が期待できます。ただし、工場ごとの状況に合わせた数式設定やシミュレーションが必要であり、すべての工場に適用できる一般化が難しいという課題も残っています。
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龍谷大学 経営学部 経営学科 講師 林 千宏 先生
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