講義No.10589 農業経済学

「軸足は地元に、目線は世界へ」~海外の日本食ブームとお米~

「軸足は地元に、目線は世界へ」~海外の日本食ブームとお米~

日本の農業は転換期!?

日本の農業は、転換期を迎えていると言われています。そのひとつが海外進出です。日本の企業や農業者が海外に進出し、農産物の栽培指導や生産管理を行って成果を上げているのです。
例えばシンガポールには、数多くの日本食レストランがあり、日本国内と同じ「ジャポニカ米」の提供にこだわる店が少なくありません。日本産のジャポニカ米は高価なので、カリフォルニア産やオーストラリア産が長く使用されてきましたが、近年になってベトナム産ジャポニカ米の使用が増加しています。実は、シンガポールで使用されているベトナム産ジャポニカ米の一部は、日本の企業や農業者がベトナムに進出し、日本式のやり方で生産しているものなのです。

安価でおいしいベトナム産ジャポニカ米

ベトナムは農業国で、もともと「インディカ米」という細長い品種を作っていました。そこに、日本の企業や農業者が進出し、ジャポニカ米の栽培指導や生産管理を行って、生産量と品質の向上を実現しました。安価でおいしいベトナム産ジャポニカ米は、シンガポールの日本食レストランで喜ばれ、ベトナムの新たな産業として成長しています。
これまで、日本の農業者が海外で活動するときは、公的機関による開発途上国支援という形が一般的でしたが、現在はビジネスとして展開し、成功する事例が生まれています。

農業の海外進出と日本食ブーム

シンガポールにおけるベトナム産ジャポニカ米の成功の背景には、海外における日本食ブームがあります。日本食ブームでジャポニカ米の人気が上がり、ニーズが増えているからです。これは、野菜や畜産物にも当てはまります。日本では、全国各地に多くの優れた農畜産物があります。これらの農畜産物も、海外に進出し、成功するチャンスがあるのです。
「軸足を地元に据え、目線を世界に向ける」ことで、日本の農業の新たな発展につながる可能性が広がっています。その状況を研究・調査し、よりよい成長に貢献することも、農学の使命のひとつなのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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高崎健康福祉大学 農学部 生物生産学科 准教授 齋藤 文信 先生

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農業経営学、農学、農業生産学

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メッセージ

学校や塾、予備校などで、日々勉強に励むことはもちろん大切です。ただ、学びの対象というのは、日常生活の中にもたくさんあります。私自身、家の近くにコンビニエンスストアやファミリーレストランが出現したことに興味をかき立てられた経験が、農学という学問に結びつきました。私たちが研究するべき対象は、日常生活と密接に関係していることも多いのです。
あなたも、日々の生活の中にあるさまざまな事象に能動的に疑問を持ち、問題意識を深めることを大切にしてください。

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