なぜ電気自動車は中国で普及した? 歴史や制度を手がかりに探る
普及を後押しする歴史的な背景
近年、100%電気で動く電気自動車(BEV)は、日本よりも中国で普及が進んでいます。中国でのBEVの普及が進んだ要因は何でしょうか。BEVの普及には、顧客のニーズに合った車載電池、BEV、充電インフラなどの人工物が必要です。このような人工物を生み出すには、政府の支援、企業の開発・生産などが不可欠です。しかし、政府と企業の利害関心や能力、行動は様々な要因によって影響されています。
まずは歴史的な背景です。中国は2008年頃から自動車の本格普及期に入り、その年間販売台数は2009年に初めて1000万台を超えるようになりました。国民の収入が高くなったのもあり、特に、公共交通インフラが十分に整備されていない地域では、この頃からファーストカーやセカンドカーを購入する人が増えていきます。このように、中国では、BEVに限らず、車自体の普及が進みやすいのです。
普及を後押しする制度
上記の歴史的な背景もあり、中国政府は2009年から様々なBEV支援策を打ち出してきました。需要側に対して、補助金の支給、税制上の優遇、低速BEVの運転免許の免除等があります。供給側に対して、補助金やBEVの生産の義務付け化等があります。このような制度的な背景もあって、中国で、車載電池やBEV、充電インフラを開発・生産する企業が増え、その結果、中国市場で入手可能なBEVの種類も増えました。
普及を後押しする国別の品質意識
中国でBEVを購入する人も増えています。日本で重要視されるリセールバリュー、故障率や航続距離などよりも、中国では、1つ目に家で安く簡単に充電ができる(家庭用電圧:220V)、2つ目に魅力的な外観・内装、3つ目にコネクティッドや自動運転技術搭載、などの品質を重要視してBEVを選ぶ人が多いです。このように、中国人と日本人の品質意識に相違が見られます。
国の歴史や制度、文化などを含めて多角的に分析することで、BEVなどの新技術が普及する要因が見えてくるのです。
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龍谷大学 経営学部 経営学科 講師 潘 宝燕 先生
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