講義No.14148 経営学・商学

なぜ電気自動車は中国で普及した? 歴史や制度を手がかりに探る

なぜ電気自動車は中国で普及した? 歴史や制度を手がかりに探る

普及を後押しする歴史的な背景

近年、100%電気で動く電気自動車(BEV)は、日本よりも中国で普及が進んでいます。中国でのBEVの普及が進んだ要因は何でしょうか。BEVの普及には、顧客のニーズに合った車載電池、BEV、充電インフラなどの人工物が必要です。このような人工物を生み出すには、政府の支援、企業の開発・生産などが不可欠です。しかし、政府と企業の利害関心や能力、行動は様々な要因によって影響されています。
まずは歴史的な背景です。中国は2008年頃から自動車の本格普及期に入り、その年間販売台数は2009年に初めて1000万台を超えるようになりました。国民の収入が高くなったのもあり、特に、公共交通インフラが十分に整備されていない地域では、この頃からファーストカーやセカンドカーを購入する人が増えていきます。このように、中国では、BEVに限らず、車自体の普及が進みやすいのです。

普及を後押しする制度

上記の歴史的な背景もあり、中国政府は2009年から様々なBEV支援策を打ち出してきました。需要側に対して、補助金の支給、税制上の優遇、低速BEVの運転免許の免除等があります。供給側に対して、補助金やBEVの生産の義務付け化等があります。このような制度的な背景もあって、中国で、車載電池やBEV、充電インフラを開発・生産する企業が増え、その結果、中国市場で入手可能なBEVの種類も増えました。

普及を後押しする国別の品質意識

中国でBEVを購入する人も増えています。日本で重要視されるリセールバリュー、故障率や航続距離などよりも、中国では、1つ目に家で安く簡単に充電ができる(家庭用電圧:220V)、2つ目に魅力的な外観・内装、3つ目にコネクティッドや自動運転技術搭載、などの品質を重要視してBEVを選ぶ人が多いです。このように、中国人と日本人の品質意識に相違が見られます。
国の歴史や制度、文化などを含めて多角的に分析することで、BEVなどの新技術が普及する要因が見えてくるのです。

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龍谷大学 経営学部 経営学科 講師 潘 宝燕 先生

龍谷大学 経営学部 経営学科 講師 潘 宝燕 先生

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技術経営論、生産管理論、国際経営学

メッセージ

とりあえずやってみる、という心構えを持ってほしいです。私は高校時代や20代の頃、細かいことを気にして踏み出せなかったことがたくさんありました。しかし、とりあえずやってみたところ「思っていたよりも大丈夫だった」と実感できました。結果は完璧ではないかもしれませんが、必ず改善点が見つかるので、次第に成功に近づけるはずです。難しそうだと思っても、とりあえず本を読んでみれば少しずつ理解できることが増えていくでしょう。ぜひあなたも失敗をおそれずに、チャレンジしてほしいです。

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