被災者を支えるラジオ局、「臨時災害放送局」とは
災害情報を届ける
「臨時災害放送局」とは、災害が発生した時にその地域の自治体などが立ち上げる臨時の放送局で、主にFMラジオを通じて情報発信を行います。災害情報といえば避難情報やインフラの復旧情報などを思い浮かべるでしょう。実際に臨時災害放送局は、そうした情報も報じます。しかし本領を発揮するのはその後の、被災した人たちがその地域で再び生活を立て直す、「復興」についての情報発信です。
心に届ける、心に寄り添う
2011年の東日本大震災の時は、30局の臨時災害放送局が開設されました。福島県富岡町の場合、多くの町民や自治体の機能が近くのいわき市に避難しましたが、その避難先で開設されました。町民をゲストに招き、ラジオで震災前の思い出を語ってもらいました。土地の方言にのせて語られる町の情景や思い出は、人々にふるさとの記憶を呼び起こし、アイデンティティをつなぎとめます。放送は録音されてアーカイブとしても残っていきます。また、町の復興計画が話し合われる市町村議会の中継がされた自治体もあります。後には広報誌でも伝えられますが、町民全員が目を通すとは限りませんし、ラジオなら運転中でも聞けます。なによりリスナーの気持ちに響く、生の声の力は大きいのです。
臨時災害放送局の課題
臨時災害放送局は主に自治体が運営しますが、財源が確保できなければ、たとえ復興途上であっても閉局せざるを得ない事態が発生します。そもそも、どこまでを「復興」とするのか、明確な線引きはありません。またいくら財源があっても、人材が確保できなければ、運用を継続することはできません。臨時災害放送局は、1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに制度化されました。さまざまな取り組みの中で、改善された点もありますが、依然課題として残されている点も少なくありません。制度化から長らく経過した今、改めて臨時災害放送局の根本的特徴を浮き彫りにし、現在の技術とニーズに合わせて、制度や運用のあり方を検討していく必要があるでしょう。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
龍谷大学 社会学部 総合社会学科 文化・メディア領域 ※2025年4月新設 講師 松浦 哲郎 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
社会学、メディア学、情報学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?