「かわいい」を集めてみたら?
かわいいって何?
少し意識してみると、周りに「かわいい」という言葉があふれていることに気づきます。赤ちゃんやアイドルに対してはもちろん、洋服やバッグ、家電製品、車など、何に対しても、世代や性別を問わず多くの人が「かわいい」と表現します。この「かわいい」をキーワードに現代文化を考えてみましょう。
大阪で行われた調査で集まった「かわいい」を分類すると、主に2通りの使われ方をしていました。一つは「好き」「好みである」という意味で、もう一つは小さくて扱いやすそうな「未成熟」なものを肯定的に見た時に使われていました。
未成熟をそのまま評価
そもそも「未成熟」は成熟するまでの途中の段階であり、かつては評価されるものではありませんでした。「未成熟こそがかわいい」と評価されるようになったのは1970年代に入ってからで、ハローキティに代表されるサンリオのキャラクターが登場したころです。高度成長期の重厚長大に対抗するように、「強くなくていいじゃない」という価値観が生まれ育ち、「ファンシーグッズ」や丸文字が流行しました。次第に「かわいいものに囲まれた自分もかわいいし、楽しい」という自己肯定感とともに、弱くて小さい、フワフワしたような「未成熟」を一つの「好ましい状態」として認めるようになっていきました。こうして半世紀をかけて、「かわいい」が津々浦々まで文化として定着していったのではないかと分析できます。
「普通のこと」に注目
社会学は、誰もが「問題」だとわかる社会問題を研究するだけではありません。身の回りのごく普通のことを研究するのも社会学です。皮膚の色艶を見て内臓の病気に気づくことがあるように、社会の表面を通して「社会の本質」をつかむことはできるはずです。「かわいい」の例のように、自分が「何だろう」と感じたことを、一般論として多くの人と共有して考えていき、生活や文化に対する視点を広げて本質を見ていくものです。社会学のテーマは限りなくあると言えます。
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先生情報 / 大学情報
龍谷大学 社会学部 総合社会学科 文化・メディア領域 ※2025年4月新設 教授 工藤 保則 先生
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