CO₂を還元して有効活用 環境を守れ!

CO₂を還元して有効活用 環境を守れ!

CO₂還元で得られるさまざまな化合物

二酸化炭素(CO₂)の増加による環境への影響は年々深刻化しています。2015年にはパリ協定ですべての国がCO₂削減に取り組むことが定められ、その対策としてCO₂を「電解還元」して得られる化合物を活用する研究が注目されています。還元とは、酸化していた物質が元に戻る現象です。CO₂の電解還元は水溶液の中に溶け込んだCO₂を金属の電極を入れて通電することでCO₂が還元され、一酸化炭素や、ギ酸、メタンガスやエチレンガスなど、有効利用できる化合物に変換することができます。

合金によって異なる反応の効率

CO₂の電解還元では、電極に使用する金属の材質や表面の状態によって、生成される化合物の成分比率や最適な電位が変わります。これは酸化する際に、CO₂の酸素分子が金属分子の表面に吸着するのか、または炭素分子が吸着するのか、電極を構成する分子のどこに吸着するのか、といった違いによって生じ、これらをコントロールする研究も進められています。例えば、銅とスズの合金では、銅の比率が高ければメタンやエチレンが多く生成されて、スズの比率が高いと一酸化炭素の生成量が増加します。電極として配合した金属の合金の組成によって生成物が変化するため、目的化合物の生成のために理想的な配合を見つけるための研究が続けられています。

持続可能な社会に向けた取り組み

現在、CO₂の電解還元により生成される化合物の実用化にはさまざまな課題があります。実際に運用していくには電極素材のさらなる質的向上に加えて、より大量のCO₂を還元できる表面積の大きい構造の電極の開発などが検討されています。これらの課題も徐々に解決に近づいており、数年以内には実用レベルに達すると言われています。今後は有効な化合物の抽出と再利用を循環する工場や、そのサイクルを作る企業など、社会全体での取り組みが必要です。

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九州工業大学 大学院生命体工学研究科 生体機能応用工学専攻 准教授 髙辻 義行 先生

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メッセージ

学生時代は数学や化学や物理、文学や音楽、スポーツなどは別の学問として教育を受けます。しかし、これらは同じ事象を別の側面からフォーカスしたもので、学問は根底ではすべてつながっています。入口は別でも、突き詰めると同じ点にたどり着きますので、勉強でもスポーツでも趣味でも、熱中できるものを持つ経験があるとよいでしょう。私も最初は薬剤開発を志しましたが、大学で界面化学に興味を持ち現在に至っています。研究者には広く物事に興味を持つこと、そして広く深い「知」への探求心も必要なのです。

九州工業大学に関心を持ったあなたは

九州工業大学大学院生命体工学研究科は、北九州市若松区の北九州学術研究都市内に2001年に開学しました。生命体工学という新しい分野を創成し、生物の持つ、省資源、省エネルギー、環境調和、人間との親和性等の優れた構造や機能を解明し、それを工学的に実現し応用することのできる技術者や研究者の育成を目標としています。また、本研究科では様々なプロジェクトに取り組んでおり、ロボットによるサッカー競技会への参加やトマト収穫ロボット競技会の企画等を通じて、「自然とロボットのあり方」について研究を進めています。