サプリも燃料も二酸化炭素吸収も! 「藻」のものすごい力

サプリも燃料も二酸化炭素吸収も! 「藻」のものすごい力

今の地球環境は藻類がつくった!?

「ミドリムシ」や「ケイソウ」という生物の名前を聞いたことがあると思います。これらは「藻」の仲間です。水中で生きていますが、植物のように光合成をして酸素を出しています。
30億年ほど前に藻類が誕生した当時、地球には酸素がほとんどありませんでした。藻類や、藻類が進化した陸上植物が、光合成により二酸化炭素を吸収して酸素を放出してくれたおかげで、動物が生きられるような地球環境ができたのです。しかし藻類が与えてくれる恩恵は、それだけではないことがわかってきました。

動物の体に欠かせない元素「セレン」の循環

藻類は「セレン」という元素を使って生きています。動物にもセレンは必須で、セレノプロテインと呼ばれる「セレンを含むタンパク質」として抗酸化作用などの役割を持っています。
セレンは海中で「亜セレン酸」など無機化合物として存在し、これは動物が過剰に摂取すると有害です。しかし、海の藻類はこれを無害化して蓄積できるので、魚が藻類を食べて、人間を含む陸上の動物が魚を食べるという生態系の中に、セレンの循環があることがわかってきました。
そこで、藻類も含めた海の生き物がセレノプロテインをつくる遺伝子を持っているか調べることで、海のセレンの循環をさらに詳しく解明する研究も行われています。それにより、困難とされてきた「赤潮(微細藻類の大量発生)」の発生予測の可能性も期待されています。

環境問題の解決にも藻類が役立つ

藻類が持っている無害化したセレンは、サプリメントとして役立てることも期待できます。その他、燃料になる脂質や医薬品・化粧品に使える色素など、役立つ物質をたくさん持っていることがわかっています。また、藻類は二酸化炭素を吸収するため地球温暖化防止にも役立っています。さらに、藻類はほかの生物と共生するものがあります。例えば、サンゴの白化は海水温度の上昇により藻類との共生が困難になることが原因であるとわかっています。
このように、世界は藻類から多大な恩恵を受けているのです。

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関東学院大学 理工学部 理工学科 生命学系 講師 新家 弘也 先生

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植物代謝生理学、分子生物学

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大学に入るときには自分の方向性をある程度決めていると思いますが、興味のないことに関しても、たくさん知識を吸収してほしいです。また、イベントやボランティアに参加するなど、外に出て、人と関わって、実際に経験してみると自分では思いつかないようなアイデアや知識に触れることができます。インターネットで検索すれば何でも知ることができるような錯覚に陥りますが、せっかくの自由な大学生活の中でいろいろな体験をして、将来に役立ててください。

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1884年(明治17年)、関東学院は横浜山手に神学校として創立されました。長い歴史と伝統をもつ関東学院はキリスト教の優れた思想、芸術、奉仕の精神を礎に、校訓「人になれ 奉仕せよ」のもと広く世の中に貢献できる学問・知識を身につけた有能な人材の育成を目指してきました。現在では、文理にわたる学部を擁する総合大学へと発展。伝統に裏打ちされたキャンパスライフサポート、学修サポート、キャリアサポートの3つのサポート体制で学生一人一人に合わせた支援をこれからも行っていきます。