生命活動は、化学反応で説明できる
生命活動は、ヒトも微生物も同じ
生物にとって「生きている」とはどういうことなのでしょう。ヒトならば、頭脳活動こそが生きている証拠だという意見もあるでしょう。しかし、もっと根源的に物質を構成する分子レベルで考えれば、化学反応で生命活動を説明できてしまいます。そこで対象となるのは、細胞が増え、物質を合成し、エネルギーを得るという生命の基本的な活動です。この活動は、実はヒトのような高等な生物も大腸菌のような微生物も同じです。
生物の中では数万、数十万、数百万の化学反応が常に起こっていますが、その多くは解明されていません。そこで、化学者は生物の化学反応の解明に日々努力しています。その成果は、電子回路のような「配線図」で表現されます。これは生命体内の化学反応から、物質と物質の関係を明らかにしたものです。その集合体は、細胞の分子ネットワークと呼ばれていて、生命活動を理解する基礎的な情報となります。
コンピュータで細胞を設計する
ところで、生命活動解明の先には何があるのでしょう。一つの目標は、細胞の設計です。新たな細胞を作り出すことで、医薬品を作ることができます。すでに、マラリアの薬が大腸菌で作れることがわかっています。また、環境やエネルギー問題への対策として、微生物からエタノールやブタノールを作り出す技術が開発されています。
細胞を設計するときには、細胞の分子ネットワークを活用します。このとき、化学反応は数式で表現できるためコンピュータの利用が可能になります。分子ネットワークがどういう振る舞いをするかをコンピュータで計算します。物質と物質の関係が複雑なために、細胞の設計にはコンピュータは不可欠です。もちろん、コンピュータでシミュレーションできるため、実験を最小限に抑えることができ、効率的に開発を進めることができます。
細胞をコンピュータで設計すると言うと驚く人もいるかもしれません。しかし、そういう時代がすでにやって来ています。
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九州工業大学 情報工学部 生命化学情報工学科 教授 倉田 博之 先生
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