講義No.14193 経営学・商学

リンゴ栽培の未来を開く、ベンチャー企業の柔軟な発想とは

リンゴ栽培の未来を開く、ベンチャー企業の柔軟な発想とは

国内随一のリンゴ生産地、青森県

青森県産のリンゴは、日本国内で生産されるリンゴのうち、約6割を占めています。リンゴの収穫時期は9月から11月にかけてですが、青森県内には、合計で約40万トンものリンゴを長期間貯蔵できる冷蔵施設があります。うち16万トンは超長期保存専用の特殊冷蔵庫です。おかげで私たちは、一年を通じておいしいリンゴを味わうことができています。

リンゴ栽培の課題

その一方で青森県では、過疎化に伴うリンゴ生産者の減少が進んでいます。県内では、所有する農地が1~2ヘクタールという小規模なリンゴ生産者が多く、年金とリンゴの収益で生活しているという高齢者が大半を占めているため、農地の集約や作業の機械化などの改善も進んでいないのが実情でした。
青森県でこれまで一般的だったリンゴの栽培は「マルバ台開心形」のりんご樹によるもので、マルバカイドウという種類の台木に接木をし、大きくて広い枝ぶりの木に育てるという栽培方法です。この方法は、日本ならではの高品質なリンゴを育てられますが、隣接する木との間に広い間隔が必要なことや、剪定(せんてい)に高度な技術を要することが課題です。
そこで、2016年に設立されたベンチャー企業などが中心となって、新たに導入が検討されているのが、「高密植栽培」という栽培方法です。縦に細長く育てたリンゴの木をごく狭い間隔で栽培するというもので、近年の改善によって、従来の栽培方法にひけを取らない高品質なリンゴを栽培できるめどがつきつつあります。

柔軟な発想がリンゴ栽培の未来を作る

同社は、リンゴの高密植栽培の普及を徐々に進め、生産から選果、梱包(こんぽう)、販売までを一気通貫で行っていくための仕組みを、青森県内で構築しつつあります。また同社は、国内だけでなく、海外をも視野に入れたリンゴの販売戦略を打ち出しています。過去の常識や慣習にとらわれないベンチャー企業ならではの柔軟な発想が、国内随一のリンゴ生産地である青森県の未来を引っぱっていくかもしれません。

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龍谷大学 経営学部 商学科 ※2025年4月新設 准教授 秋庭 太 先生

龍谷大学 経営学部 商学科 ※2025年4月新設 准教授 秋庭 太 先生

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