講義No.13049 経営学・商学

マーケティングの力で社会課題の解決を図る

マーケティングの力で社会課題の解決を図る

「これを食べるんけ?」

和歌山県有田川町は、「ぶどう山椒(さんしょう)」の発祥地です。全国シェア6割を超える一大産地ですが、約170軒ある生産者のほとんどが高齢者で、後継者不足が深刻でした。そこで発足したのが、官学連携による「ぶどう山椒の発祥地を未来へつなぐプロジェクト」です。マーケティングの手法を用いて、まずはぶどう山椒を理解することから始められました。ところが、生産者にぶどう山椒のおいしい食べ方を聞くと、「これを食べるんけ?」と意外な答えが寄せられたのです。

食文化もブランドもなかった

有田川町のぶどう山椒は、ほぼ全量が農協を通じて製薬メーカーに販売され、漢方の原料に使われてきました。そのためぶどう山椒は、産地の外で消費される「地産外消」の農産物であり、生産者も食品との認識がなかったのです。地元に食文化が根付いておらず、「発祥の地」に対するブランドもない状態でした。一方、消費者にぶどう山椒を食べてもらい調査したところ、多くの消費者が「普通の山椒よりも香りが高い」と感じるものの、「ぶどう山椒」「有田川町」に対する知名度はほぼないこともわかりました。

魅力を引き出す商品開発

そこで手がけたのが、新たな食品の開発です。飲食店や食品会社とのコラボで、ぶどう山椒を使ったカレーやスパイスミックス、スイーツなどの商品が十数点開発されました。販売には「ぶどう山椒発祥の地」を前面に出したプロモーションにより、ぶどう山椒やその生産者、そして有田川町の認知向上にもつながりました。さらに、活用方法や開発された商品の魅力、消費者から寄せられた声などを冊子にまとめ、有田川町のぶどう山椒生産者に配付しました。ぶどう山椒の魅力や消費者の声を知ることで、生産者のモチベーションも向上したのです。現在では、加工やネット通販を手がける生産者が現れたり、ぶどう山椒の生産に若い世代が参入したりしています。マーケティングの知見で需要と供給の両方を喚起し、ぶどう山椒を未来へつなげる取り組みが今も続いています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

龍谷大学 経営学部 経営学科 教授 藤岡 章子 先生

龍谷大学 経営学部 経営学科 教授 藤岡 章子 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

経営学、マーケティング学

先生が目指すSDGs

メッセージ

若いあなたには、どんどん外に出てほしいです。オンラインも便利ですが、画面を見てすべてを理解したつもりになるのではなく、人やものごとに直接触れて、身体的に理解することを心がけましょう。自分のなかに体験をストックしておくと、授業やテキストで知識に触れた時に、「あのときのことだ」と体験と知識が結びつき、学びがぐっと深まります。体験するなかで「これはなぜだろう」と問題意識を持ち、気づきを学びに変えられる人にとって、マーケティングはとてもエキサイティングな学問となるでしょう。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

龍谷大学に関心を持ったあなたは

『進取と共生』~世界に響きあう龍谷大学~
龍谷大学は、380年の伝統を超え、新たな一歩を踏み出しました。
その歴史は、江戸時代初期の寛永16年(1639)、京都・西本願寺に、仏教の研究と人材養成のための「学寮」が設けられたことに始まります。
そして、近世から近代、現代への日本の歴史の中で新しさを重ねて380余年。現在では京都・滋賀の3つのキャンパスに、10学部・21学科6課程、大学院を擁する、全国屈指の総合大学として、発展を続けています。