日本の経済を支えてきた中小企業が、これから果たすべき役割とは?
日本企業の99.7%は中小企業
中小企業とは、製造業や建設業などでは資本金3億円以下で従業員は300人以下、サービス業などでは資本金5000万円以下で従業員は100人以下といった比較的小規模な体制の企業、と日本の中小企業基本法で定義されています。中小企業が日本国内の企業総数では99.7%、従業者総数では70%以上の割合をしめているという結果が出ています。
揺らぎはじめた大手企業と下請けの関係
第二次世界大戦後から、日本国内の中小企業はものづくりの基盤技術と開発力で、大手企業を下請けの立場で支え続け、ともに成長を遂げてきました。しかし、1980年代後半からの円高や、世界経済の情報化とグローバル化が進んだことにより、日本国内における大手と下請けの関係は、次第にうまく機能しなくなりました。大手企業にとっては、部品調達や製造工程などのさまざまな局面で、海外の企業を活用することが容易になったからです。
下請けとしての存在価値が揺らいでいる今、日本国内の中小企業はどのような戦略を選ぶべきなのでしょう? 例えば、中小規模の柔軟性を生かし独自性のあるアイデアで製品やサービスを生み出せれば、新たな取引先や顧客層の開拓に成功し、大手企業の下請けではない独立した存在として生き残りを図ることができます。また、旺盛な好奇心や起業家精神を発揮し、未知の分野にチャレンジするベンチャー企業を立ち上げ、純粋なイノベーションと技術力で勝負していくという選択肢もあります。
中小企業がもたらす経済の新陳代謝
経済社会の発展には、常に新陳代謝が必要です。中小企業が新たにどんどん生まれ、互いに競争し合って創造的破壊をくりかえしながら、今の時代に求められている製品やサービスを作り出していけば、人々の暮らしもより豊かになっていくでしょう。このような新規開業企業が技術革新の担い手だけでなく、医療や介護など、さまざまな社会問題の解決に取り組む上でも重要な役割を担っています。中小企業は、今こそその価値をもっと評価されるべき存在なのです。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 経済学部 経済学科 准教授 カン ビクトリヤ 先生
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