隣国との対立は避けられない? 地政学から見る報道と国際関係
「再構成した現実」の報道
国際情勢について情報を集めるとき、多くの場合、新聞やテレビ、インターネットニュースなどのメディアを活用するでしょう。しかし、報道内容に触れる際は、「メディアは世界のあらゆる事象を取り上げているわけではない」ということに気をつけなければなりません。記事や番組の中では、各メディアが「ニュースにする価値がある」と思った出来事を切り取って紹介しています。報道された事柄は、あくまでもメディアによって「再構成された現実」であり、各メディアの意図も反映されやすいということを理解しておく必要があります。
大きな偏りが見られる日本の国際報道
そうした観点から日本における大手ニュースポータルサイトの報道内容を分析してみると、特に国際に関する記事の分量が極端に少ないことが浮かび上がってきます。同サイトに2023年に掲載された記事の中で、外国の事柄や国際関係を報じたものは全体の1割程度でした。ニュースとして取り上げられた国も、アメリカなどの先進国とロシアなどの日本に大きな影響を与える国や、中国や韓国などの東アジア諸国がほとんどです。報道内容も、ロシアのウクライナ侵攻や中国の領海侵犯など、ネガティブな話題が大半を占めていました。
地政学から見えてくる国際関係
ここで地政学の理論を振り返ってみると、隣国のネガティブな話題が報じられやすい理由と、そもそもその出来事が発生している原因を考えることができます。「隣国同士が対立する」ケースは多く、地政学では原則的なパターンの一つとして捉えます。また、「ランドパワー(大陸国家)」と「シーパワー(海洋国家)」が対立しやすく、ランドパワーはシーパワーへ力を広げようとする傾向もあります。この考え方を踏まえると、日本と中国が近年、尖閣諸島を巡って対立している理由もわかります。海をめざす大陸国家の中国と、隣国であり海洋国家である日本は対立が避けられないのです。それゆえ、隣国に関する報道は、どうしても政治的対立に結びついてしまうと言えます。
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関西外国語大学 英語国際学部 アジア共創学科 ※2025年4月新設 准教授 金 樹延 先生
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