イギリス帝国の植民地
現地の宗教・文化を無視した支配
かつてイギリス帝国の植民地支配はアメリカ、カナダ、オーストラリア、インド、エジプト、東南アジア諸国、アフリカ諸国に及んでいました。19世紀半ば頃から20世紀初頭までは「パクス・ブリタニカ」と呼ばれ、イギリス帝国の最盛期であると言われています。その時期にイギリスを軍事的・経済的に支えたのがインドでした。そのインドが反乱を起こしたことがあります。1857年の「インド大反乱」です。
反乱の直接の原因は文化的対立によるものでした。当時の新式銃の火薬を包む紙に牛や豚の脂が塗ってあり、インド人兵士が銃を使うにはその紙を口で噛み切る必要がありました。兵士の中にはヒンズー教徒やムスリムが多くいました。ヒンズー教徒にとって牛は神聖な生き物であり、ムスリムにとって豚はけがれた生き物です。牛や豚の脂を口にすることは宗教上のタブーをおかすことになるため、兵士たちは銃の使用を拒否しました。しかしイギリスはそれを無視して強制したために兵士たちは激怒し、反乱になったと言われています。
帝国支配を変えたインドの反乱
インド大反乱はイギリスが抑え込んで、結果的にインドは直轄領になりました。イギリスはこの経験によって、押しつける帝国支配はうまくいかない、むしろ現地のやりかたを取り入れるところは取り入れ、現地のエリートと言われる人たちを、自分たちの支配体制側に取りこんで現地のシステムをうまく生かした方が、支配はうまくいくということに気づきます。これ以後、現地の人たちとの交渉などは、現地のエリートに任せるようになりました。これを間接統治と言いますが、最高の権限だけはイギリスに残しました。
そして、間接統治をしやすくするため、現地のエリートに西洋式の教育を施して、西洋風の近代的価値観や思想を教えました。ただ皮肉なことに、そうすることで、教養を身につけた現地の人たちは、イギリスの支配のあり方が客観的に見えるようになり、そういう人たちが、のちに独立運動の指導者になっていきます。
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