図やグラフを見るとき、頭の中では何が起きているのか?

図やグラフを見るとき、頭の中では何が起きているのか?

「ものを見る」ということの不思議

私たちは普段特に意識することなく、周りにあるものを見ています。さて、人はなぜものを認識することができるのでしょうか。そのような哲学的な問いをもとに、視覚による物体認識のメカニズムの解明が行われています。その中のひとつが、図やグラフを視覚的に捉える仕組みについての研究です。ビッグデータと呼ばれるような膨大なデータが扱われるようになった昨今、データを図として把握する力が求められています。図やグラフを認識する仕組みがわかれば、それを読み解く力の向上が期待できるとともに、図やグラフをよりわかりやすく作ることも可能となるでしょう。また、誤解を招くような図やグラフを見抜く力も養われると考えられます。

心理実験で読み取りへの効果を調べる

研究では、「ある原因がグラフの読み取りを促進している」という仮説を立て、それをもとに条件を設定する心理実験を行います。例えば、グラフに色がついているほうが読み取りやすいという仮説を立て、色がついたグラフとついていないグラフを用意して、参加者に読み取りの課題を解いてもらいます。参加者の回答の早さや正確性を比較して、仮説の正しさを判断するのです。
こうした回答の早さや正確性だけでなく、fMRIで参加者の脳の活動を計測し、課題を行っているときに脳のどの場所が活動しているのかを調べたり、見ているときの視線の計測を行ったりすることもあります。

図やグラフを読み取る仕組み

人が図やグラフを見るときの脳活動から、全体的な特性に目が行きがちなのを抑えて、課題解決のために局所的な部分に注目する仕組みが働いていることがわかってきました。また、家系図や生物進化の系統図のように、読む方向などのルールに基づいて作られた図を読み取るには、慣習的な知識が働いていることが心理実験から明らかにされています。
人間が図やグラフを読み取る仕組みについてこれまで明らかになってきたことは、学校などの教育現場で、読み取りの力の促進につなげることができると期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

同志社大学 文化情報学部 文化情報学科 教授 杉尾 武志 先生

同志社大学 文化情報学部 文化情報学科 教授 杉尾 武志 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

認知科学、認知心理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

日常の中で素朴な問いを見つけることを大切にしてください。例えば、チョコレートのパッケージが同じような色使いなのはなぜなのか、人気のキャラクターに共通する特徴は、私たちの頭の中での処理にどう影響するのだろうか、などです。日常の中で文化と人間の関わりを考えてみると、問いの出発点が見つかります。また、自分が面白いと思ったことや一生懸命やっていることについて、それがなぜなのか考えてみましょう。自ら問いを発することは、心理学に限らず大学での学びに役立ちます。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

同志社大学に関心を持ったあなたは

同志社大学は現在14学部34学科16研究科・学生数約28,000人を擁する総合大学となり、創立150周年を迎える2025年に向けて、教育・研究改革を進めています。
教学面においては、今出川・京田辺の両校地で年間約11,600の科目・クラスを開講し(2023年度)、そのうち14学部共通で学べる「全学共通教養教育科目」を約3,300科目・クラス設置しています。さらには、他大学との単位互換制度や副専攻制度を設置するなど、学生の興味・関心に合わせて自由に学ぶことができる充実した学習環境を整えています。