体内時計の乱れを食生活で予防・改善せよ!
体の中に時計?
人間も含めて地球上の生物たちには、約24時間周期で体内の働きを変化させる「体内時計」が備わっています。この体内時計によってホルモンが分泌され、昼行性の生物たちは無意識に、朝は日の光とともに目覚め、日が暮れると眠りにつきます(サーカディアンリズム)。体内時計を利用して、生物たちは季節で移りかわる日の長さをも測ります。こうした「光周性」と呼ばれる性質によって、季節の変化にも対応しています。このような時間とかかわる生物のしくみを理解し、活用しようとする学問が、「時間生物学」です。
食と栄養から体内時計の乱れを改善!
現代社会では、スマホを見ながらの夜更かしや昼夜交替勤務などによる不規則な生活で、体内時計が乱れている人が少なくありません。こうした体内時計の乱れは、睡眠障害だけでなく、がんなどの病気の発症リスクを高めてしまいます。そこで「時間栄養学」という、栄養学的に体内時計の乱れを改善および予防する研究が行われています。
具体的には、食事をとる時間やリズム、栄養のバランス、サプリメントなどの特定の栄養素の効果を、小型動物により研究しています。その結果、夜食はひかえて朝食をしっかりとること、またアミノ酸などの栄養素によっても体内時計の乱れが調整・予防できることが明らかになりました。さらに季節の変化による気分障害である、季節性情動障害(冬季うつ病)についても、予防につながる栄養療法の可能性が動物でわかってきました。
畜産学(アニマルサイエンス)への応用
時間生物学および時間栄養学は、人間の健康への応用に加えて、牛や豚、鶏などの畜産動物へ応用できないかと研究が進められています。その結果、成長初期の日照時間によって動物の成長に違いが出ることがわかってきました。季節の変化の中で、体重増加や繁殖効率をコントロールして生産性を高める方法が調べられています。また体内時計は細胞の一つ一つで時計遺伝子が働くことによるものなので、動物実験を行わず、細胞培養によって評価する実験も進められています。
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先生情報 / 大学情報
九州大学 農学部 生物資源環境学科 動物生産科学コース 教授 安尾 しのぶ 先生
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時間生物学、時間栄養学、動物生理学先生が目指すSDGs
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