物価の研究を通じて、 「経済の体温計」をアップデートしたい!
行動を左右する数字、社会を左右する数字
体調が悪いと感じたとき、多くの人は体温計で体温を確認して、学校を休む、または病院に行くなど、その後の行動の参考にするでしょう。もし体温計が壊れていたら、どのようなことが起こるでしょうか? 本当は熱があるのに、無理をして学校に行く人がいるかもしれません。
物価は、社会全体の経済状況を反映する「経済の体温計」で、様々な場面で活用されています。例えば、物価の変化をふまえ、給料はどのくらい上がる必要があるのか、年金の支給額を変える必要があるのか、といった場面です。社会における意思決定を左右する数字であるため、経済の実勢を正確に反映したものである必要があります。
実感と体温計の数字が一致しない!?
私たちがふだんテレビや新聞で目にする「日本全体の物価」は、総務省が「消費者物価指数」として毎月公表しています。「先月より物価が〇〇%上昇した」といったニュースを見たことがある人も多いでしょう。「去年より20%はあがっているのでは」と思う人もいるかもしれません。もちろん、人によって物価の変化に対する印象は違うわけですが、国が発表する「消費者物価指数」が、人々の実感とあまりに違う場合は、物価の計測方法自体に改良が必要です。
多様なライフスタイルを反映した物価へ
ニュースなどで報道される「日本全体の物価」が、個人の実感と合わない場合、どのような理由が考えられるでしょうか? 住んでいる地域によって、モノやサービスの値段が違う、ということも考えれらます。あるいは、同じ地域に住んでいても、若者と高齢者では、消費するものがまったく違うかもしれません。最近の研究では、地域、年齢、あるいは、所得によって異なる物価指数を計算し、それに基づいて「人々の実質的な豊かさ」を計測する試みが進んでいます。人々のライフスタイルをデータから丁寧に分析し、今後も経済の体温計をアップデートしていく必要があります。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
四国大学 経営情報学部 経営情報学科 准教授 稲倉 典子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
応用ミクロ計量経済学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?