文学賞を受賞できる小説を書くには? 文芸創作の鍵を探る
どうすれば小説を書ける?
文学賞を受賞するような小説は、どのような力を磨けば書けるようになるのでしょうか。上手な文章を書く力や豊富な語彙(ごい)力を身につけていても、文学賞の受賞につながるとは限りません。そんな、文芸作品の生み出し方に注目する学問分野が「文芸創作」です。人の心に響くような作品はいかにして生み出されるかについて、研究がなされています。
人間性が小説を変える
研究の基盤となるのが、文学賞受賞作家のデビューを支えた編集者のノウハウです。編集者は作家が作品を生み出す際にさまざまなアドバイスをしています。その中から効果的な内容を抽出して、教育として体系化しようというわけです。
重要だとわかった要素の一つが、作家の人間性です。性格が悪いと人の心に響く小説が書けない、と言い換えてもいいでしょう。小説の世界では登場人物たちの人生を描く必要があります。そのためには人間を肯定して尊重する気持ちが求められます。一方で斜に構えて世の中を批判した作品や、世の中に報復しようという意図で書かれた小説は、読み手が疲れてしまう傾向が見られました。ただし、ネガティブな気持ちが心の表層に出ているときでも、自己分析をして内面を掘り下げれば、作家が持つ道徳感や人に対する思いやりに出会えることもわかりました。こうした人間性に気づいて小説に反映させると、読み手に届く作品になるのです。
文芸創作がもたらす成長
文芸創作を学んでいる大学生を観察すると、書き手の人間性が成長していくこともわかってきました。いい小説を書いて周囲に評価されたいと思うほど、書き手自身が人間的に成長していかなければならないと気づくからです。そのため人の立場に立って思考したり、人とのコミュニケーションをしっかりとったりして考えを深めて、その上で小説を書くようになります。
「小説を書く」という行為を通して、物事を深く考えて、人に対する思いやりを持てるような人間的な成長を促そうと、教育方法の研究と実践が続いています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
四国大学 文学部 日本文学科 教授 佐々木 義登 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
近現代文学、文芸創作先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?