時給が上がれば生活は潤う? 経済指標を正しく読み取る経済学
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日本の代表的な企業の株価を指数化した「日経平均株価」が、2024年2月に過去最高を更新しました。株価の上昇は、企業の業績の好調さや、企業の経営改革への投資家からの期待の現れです。ほかにもさまざまな要因が影響し合っており、中でも大きいのが「為替」です。米ドルなどの主要通貨に対して日本円の価値が下がる「円安」が続くことによって、グローバル企業が海外の事業で得た外貨建ての利益が、日本円で高く換算されているのです。
「名目」と「実質」とは
経済指標において、「名目」と「実質」という捉え方があります。例えばアルバイトの時給が1,000円というのは名目で、名目に対して、ある年からの物価の上昇や下落分を取り除いた値が「実質」です。ある年に1,000円だった時給が翌年1,200円になると、名目上は1.2倍の時給アップとなりますが、それ以上に物価が上がっている場合は、実質の時給はむしろ下がっているのです。ニュースで報じられる株価や為替は、あくまでも一時点の「名目」であることがほとんどです。経済学においては、名目の値の上下動にはさほど意味はなく、実質の動きを正しくとらえることが重要視されます。
賃金上昇は実質がカギ
同じ労力でもより多く生産できるといった「実質」の高まりで、賃金は上昇します。例えば企業での、人手不足問題を解消するためのデジタルツール活用や、生産性を高める施策、販売を増やすマーケティング活動などがこれにあたります。学生が大学で専門性を身につけるといういうのも、同じ効果があります。経済全体では、産業構造の転換や技術進歩が重要です。円安による企業の業績改善や株価上昇は一部の企業のみのことで、それも、円高に転じると逆方向に向かう可能性があります。円安などの名目のみに頼らず、実質の改善で企業の利益が高まれば、強い日本経済につながっていくのです。
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