データの背景にあるものを推測する「統計学」

データの背景にあるものを推測する「統計学」

本当にはわからない事柄を判断するための学問

「統計学」というと、高校生のあなたには、あまり聞きなれない言葉かもしれません。ごく簡単に言うと、ある事柄についてのデータが与えられた時、その背後にあるものを推論するための方法を研究する学問が統計学です。統計学により、本当にはわからない事柄について合理的な判断が可能となるのです。

仮説検定によるデータの検証方法

統計学では、「仮説検定」と呼ばれる分析手法がよく用いられます。仮説検定とは、自らが立てた仮説が正しいかどうかをデータで検証するための手法です。サンプルとなるデータは多ければ多いほど精度は高まりますが、多くの場合、サンプルの収集には限度があります。限られた量のデータでも精度の高い判断ができるようにするのが、統計学の役割です。例えば、「コインを投げると、2分の1の確率で表が出る」という仮説を立てるとしましょう。実際に100回投げてみると、必ずしも50回ずつ表と裏が出るとは限りません。しかし、表が80回、裏が20回となると、この仮説は正しくなくて、コイン自体が歪んでいるなどの問題があるかもしれない、という推論が成り立ちます。こうした判断を下す場合、どこで境目を区切るのかが統計学では重要になります。実際には、想定していることとは反対のことを仮説にして、その仮説が間違っていることをデータで証明するというやり方がよく用いられます。統計学において、仮説を否定することには非常に強い意味があるのです。

身近なところで使われている統計学

こうした統計学の分析手法は、私たちの社会の中で、さまざまな分野で用いられています。例えば、外国から輸入する農作物の残留農薬の検査や、河川の水質汚染の検査、工場で生産する製品の不良品検査、新薬の効能を確かめるための検査などです。統計学は、私たちの生活とは切っても切り離せない、重要な学問なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東京都立大学 経済経営学部 経済経営学科 准教授 森 治憲 先生

東京都立大学 経済経営学部 経済経営学科 准教授 森 治憲 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

統計学

メッセージ

大学への進学をめざしている高校生のあなたは、入試に必要な科目の勉強に集中していると思います。大学に入学することが先決ですから、それは正しいことですが、大学に合格したら、専門科目から離れた分野まで視野を広げてほしいです。例えば、理系の学生さんなら、政治や文学などにも興味を持ってみましょう。文系の学生さんならやはり数学です。私が教えている統計学もそうですが、文系の学部でも数学が必要なことを忘れないでください。

東京都立大学に関心を持ったあなたは

東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。