交渉上手が得をする? 国際政治と経済の深い関係

交渉上手が得をする? 国際政治と経済の深い関係

国家間の交渉と経済力

身の回りの物の価格には、国内の経済事情だけでなく、国際政治も密接に関係しています。軍事力に強い影響を受けた帝国主義の時代とは異なり、大きな戦争がなくなった第二次大戦後には、経済力や国家間交渉の影響が増していきました。例えば1980年代に貿易で大きな黒字をあげていた日本に対して、アメリカがさまざまな規制を要求した「日米貿易摩擦」も二国間交渉の一例です。こうした、経済関係の背景にある、国と国との交渉(またその背景にある各国の政策や制度)について考える学問を、国際政治経済学といいます。

日本の国際的影響力

バブル経済の崩壊後、日本の国力は相対的に低下してきました。しかし、2010年代には逆に発言力が増したようにみえます。その要因の一つに、日本が「FTA(特定の国や地域間で関税や貿易上の障壁を撤廃する協定)」に積極的に取り組んできたことがあげられます。「GATT(関税および貿易に関する一般協定)」によって経済発展を遂げた日本は、2000年頃から世界各国に追随する形でFTAに注力します。その交渉過程ではいくつかの困難を経験しますが、地道に実績を重ねてきたことで、新たな貿易協定を結ぶ際に、自国がより優位になるような交渉力を発揮できていると考えられます。

柔軟な視点からとらえる

ある貿易協定を説明しようとするとき、交渉担当者や意思決定者の視点からも、労働組合や企業の視点からも、国際制度の面からも、そして経済原理や政治対立の構図からも見ることができます。複雑な要因が絡み合う現象だけに、それを説明する方法論や、アプローチの違いも多様になります。ですから、国際政治経済学の研究では、インタビューや政府の内部文書の調査だけでなく、統計学を用いた検証、ゲーム理論による分析、コンピュータを用いたシミュレーションも行われています。中国の台頭など、グローバル社会のあり方が大きく変わる中で既存の視点にとらわれない柔軟で複合的な視点をもつことで、国際政治と経済の新たな側面が見えてくるのです。

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先生情報 / 大学情報

上智大学 総合グローバル学部 総合グローバル学科 教授 鈴木 一敏 先生

上智大学 総合グローバル学部 総合グローバル学科 教授 鈴木 一敏 先生

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国際関係論、国際政治経済学

メッセージ

大学での学びは、高校までのような一律の学習指導要領に基づくものではなく、より探索的になります。学問の基礎を学んだあとは、それを自分で深めていかなければなりません。その際に意識してほしいのは、一つの見方ではなく、柔軟で多面的な見方をもつことです。人間社会は複雑であり、私たちが見ているのは現象のごく一部にすぎないことも多くあります。好奇心や探求心を忘れずに、またすでにある考えや誰かの見方にとらわれずに、頭の中でいろいろな視点を切り替えながら考えられる人をめざしてください。

上智大学に関心を持ったあなたは

日本初のカトリック大学として開学し、創立当初から国際性豊かな大学として、外国語教育に重点を置いてきました。留学制度も充実しており、世界約80ヶ国に390校以上にも及ぶ交換留学・学術交流協定校があり、コロナ禍の2020年度、2021年度を除き、毎年約1,000人の学生が世界の様々な国や地域へ留学しています。また、少人数教育も本学の伝統のひとつです。教員と学生の距離が近く、また学生同士が率直に意見を交し合う、きわめて理想的な教育環境が整っています。他者を思いやり、社会に奉仕できる人材を育成します。