講義No.14281 看護学

子どもの在宅ケアにおける家族へのサポートの取り組み

子どもの在宅ケアにおける家族へのサポートの取り組み

変化する家族と支援のあり方

身体障がいや知的障がい、医療的ケアなどの障がいのある子どものケアは専門性が高く、これまでは施設や病院が主体となってきました。しかし、わが子を施設ではなく自分たちで育てたいと考える保護者の声や、病院や支援施設から距離のある地域で暮らす家庭でも、「在宅ケア」を選択するケースが増えてきました。在宅ケアには、自分たちの生活スタイルに合わせて必要な支援を選択できるといった利点があります。

地域全体の支援で家族のサポートを考える

障がいのある子どもの在宅ケアでは、子どもの世話をする家族の負担がとても大きくなります。その理由として、ケアの疲弊や自分たちの時間のなさがあります。特に地方では子どものケアと両立できる仕事が少ないといった悩みが多く見受けられます。家族の負担を減らすには、日中一時支援事業や放課後デイサービスなどをうまく活用する方法があります。また、家庭内だけで悩まずに、相談支援専門員や医療的ケア児コーディネーターに相談して家族がケアの選択肢を広げていくことも有効です。さらに、看護師や医師、保育士などの専門職が、互いの見地から家族の悩みや問題点を共有して、必要な支援を検討するといったケア家庭を支える包括的な取り組みもあります。

限られたリソースで最大限の支援環境を

それぞれの子どもや家庭によって必要とする支援の内容は異なるため、状況に合わせて適切な判断ができる高度な専門性を持った看護師の育成が求められています。また、そういった看護師の不安や悩みを聞き取り、適切なサポートを行うことも検討されています。しかし看護師の育成だけではなく、地域による包括的な枠組みづくりには多くの財源や人的資源が必要です。そこで岩手県では、学生ボランティアに助力を得て、障がいのある子どもの親や専門職者が研修会を開くといった支援体制を構築する試みが進められています。このような取り組みは、同じ課題を抱えるほかの地域にとっても参考になるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

岩手県立大学 看護学部  准教授 原 瑞恵 先生

岩手県立大学 看護学部 准教授 原 瑞恵 先生

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生涯発達看護学、小児看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

小児看護では、子どもたちの未来を守っていくための技術と知識を学びます。しかし、個人でできることには限界があるため、責任や問題を個人で抱え込まずに、ほかの支援者や地域社会の協力を得ることが大切です。そうした心構えを普段から養うためには、例えば、近所の人とのあいさつや何気ない世間話などの交流を持ち、さまざまな人々と触れ合う機会を持ってみてください。そうした小さな積み重ねが、自信や周囲からの信頼につながっていきます。

岩手県立大学に関心を持ったあなたは

大学は「知識」を得る場であるだけではなく、「人生の目的」を考える場であり、これからの人生で自分は何をなすべきかを探求する場でもあります。人はそれぞれ固有の素質と能力を持っています。それをいかに見出し、育成していくかが教育の最大課題であると考えています。この大学での貴重な学習期間に、自己の能力と個性を伸ばし、適性を見出すことに努めてください。本学の教職員は、全力を挙げてこれに協力します。