薬の効果は統計的因果推論で明らかになる
相関関係と因果関係
チョコレート消費量が多い国ほどノーベル賞の受賞者数が多いというデータがあります。このデータから、あなたはチョコレートの消費量を増やせばノーベル賞の受賞者数は増えると思いますか。多くの人はそんなことはないと答えるでしょう。というのも、このデータは消費量と受賞者数の相関関係は示していますが、2つの間に因果関係が存在するとは示していないからです。しかし、世の中には因果関係があると思われるデータも存在します。それはどんな場合でしょうか。
薬の効果があるとはどういうことか
例えば薬の場合、それが本当に効くかは、実際に人に投与してみないとわかりません。薬の開発では、治験の段階で人での検証が行われます。薬の効果を調べるには、同じ人に対して治験薬を投与した場合と効果のない偽薬を投与した場合を比較する必要があります。その場合、治験薬を投与した場合のみ病気が治れば、薬が効いたと言えるでしょう。ところが、同時に同じ人にそんなことをするのは不可能です。そこで、治験では集団に対して同じことを行っています。治験薬を投与した集団で多くの人が治り、偽薬を投与した集団がほとんど治らなければ、薬は効いたと言えるでしょう。
データから適切な結論を導くために
統計学では、このような方法で有意な結果が出れば「効果がある」と結論づけます。つまり、この場合薬と治癒の間に因果関係があるということになります。このように、物ごとの因果関係を統計的に明らかにする学問は統計的因果推論とよばれています。なお、「80%の確率で治る」といったように効果の大きさは確率的に表現されます。また、あるデータから得られた効果の大きさの信頼度も確率的に与えられます。あまりにデータの数(サンプルサイズといいます)が少ないと結果の信頼性はありません。そこで、薬の効果を確認するために必要なサンプルサイズを統計学を用いて算出します。統計学では、このようにサンプルサイズや計測手法を工夫することでデータから適切な結論を導くことを可能としています。
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岡山大学 工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 准教授 山本 倫生 先生
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