データを用いて地方財政の政策を正しく見極める
自治体の政策の効果
水道の料金は、原則として水道事業を運営する市町村に支払われます。節水の意識が浸透していることもあり、水の使用量は減少傾向にあります。人口減少が進む将来はさらなる落ち込みが予想されることから、各自治体は水道事業の「広域化」に取り組んでいます。複数の自治体が共同で経営することで事業が効率化され、供給コストも下がることを期待してのことですが、実際にその通りになるのでしょうか。水道広域化だけでなく、小中学校の義務教育をはじめ、自治体にはさまざまな財政的課題があります。その解決のために日々さまざまな政策が採択されていますが、その効果は客観的に見極められなければなりません。
データと理論モデル
経済学の地方財政という分野では、こうした地方財政の課題について、さまざまなデータを用いて研究しています。その際には、理論モデルなどを用いて仮説や分析モデルを導き出します。例えば水道広域化の効果を考える際は、理論モデルなどを基に仮説を立て、さまざまな自治体が設定する水道料金や人件費をはじめ、多岐にわたるデータを収集し、データ分析をします。
近年、子どもの医療費の無償化を掲げる自治体が増えています。その政策が自治体の財政に見合っているのか、それとも単に近隣の自治体に倣ったものなのかを考えるうえでも、関連するデータと理論モデルを用いることでより客観的な判断ができるようになります。
地方財政研究の役割
自治体の政策や財政にはさまざまな要素が関係するため、理論モデルやデータだけを見ていては仮説が外れることがあります。関連する制度やその自治体の歴史を含めて、実態を正確に調査・把握することで、データから得られた仮説を適切に補完することができます。高齢化や過疎化など、さまざまな課題に向き合う自治体では、これまで以上に効果的な政策を打ち出すことが求められます。政策設計の前提となる客観的な根拠を示す、あるいは政策の効果を具体的に検証する地方財政研究の重要性は、今後ますます高まるといえるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
和歌山大学 経済学部 経済学科 准教授 齊藤 仁 先生
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