高度な情報を伝達する「カラー動画ピクトグラムデザイン」への挑戦
文字を使わないコミュニケーションツール
駅などのトイレマークは、文字に頼らず男女のどちらのトイレかという情報を伝えています。これは「ピクトグラム」と呼ばれ、何らかの情報や意味を、大人から子ども、また外国人など、誰にでもわかるように文字を使わず意味を伝えるツールです。今では万国共通のこのトイレのピクトグラムは、1964年の東京オリンピックに向けて日本で生まれました。しかし高度な意味を伝達するには1枚の静止画では限界があります。そこでピクトグラムをカラー動画にして意味を伝える研究が行われています。
カラー動画で正しく意味を伝えるポイントは?
カラー動画ピクトグラムの実験から「意味を導く必要最小限の構成要素で端的に表現すること」が重要だとわかりました。例えば、「並ぶ」という動詞において、バス停に人が並んでいる静止画では、バス停という要素が「待つ」を連想させ、意味の誤認につながります。そこで、一人ずつバス停に並ぶ様子を動画化すると意味内容は正しく伝わります。また、複数の動作や場面を組み合わせることも有効です。手元の動作だけで表現した「鍵をかける」は「鍵を開ける」と混同されます。そこで、最初にドアから人が外に出る場面があると意味が正しく伝わります。さらに、外国人にも伝えるためには、文化や宗教の違いを考慮した構成要素を選択しなければなりません。
論理思考による制作プロセスで優れたデザインを
カラー動画ピクトグラムのデザイン制作においては、まず、正しくその意味を伝えられるような構成要素を科学的な実験を通して選択、統合し、端的にビジュアルとして構成していくプロセスが必要です。また、そのピクトグラムを多くの国籍の多くの被験者を使って実験を行い、意味が伝わっているのかを確認し、微修正していく工程が不可欠です。2020年の東京オリンピックに向けて、経済産業省を中心にピクトグラムの見直しが進められています。ここでも科学的な方法による分析や論理思考に基づいたデザイン策定が求められているのです。
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先生情報 / 大学情報
和歌山大学 システム工学部 システム工学科 教授 原田 利宣 先生
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