高度化する医療機器 事故を限りなくゼロにするために
0.05%をゼロに
現代の医療は、高度な医療機器が欠かせないものとなっています。心臓の手術で使用する「人工心肺装置」もそのひとつで、手術時に止める心臓の代わりに、心臓や肺の機能を代行する生命維持管理装置です。
人工心肺装置に関する医療事故で、患者に重大な影響をおよぼす医療事故の発生率は約0.05%です。ほかの医療事故と比べてかなり低いものの、その0.05%に自分や大切な人が該当してしまったら、どう思うでしょう。心臓手術の事故は命に関わるため、限りなくゼロに近づける必要があるのです。
人間工学とストレスから検証
人工心肺装置には複数のモニターやパネル、スイッチが配置されています。機器の安全性を高めるには、こうした医療機器を扱う「臨床工学技士」の動線や視線の動き、操作性といった人間工学的な観点から検証して設計・デザインを検討していきます。
機器を操作する人のストレスも、その操作に影響を与えます。聞き取りや心拍数の計測、唾液の成分などからストレスの状態を調べると、後ろから声を掛けられたときや、患者の心臓の動きを再開させるときなどに、ストレスが高まることがわかりました。その対応策はもちろん、操作自体のストレスも軽減することが、医療事故を減らすことにつながります。
さらに、血液を送り込むポンプのなかに、わずかでも気泡が入ったら重大な事故につながります。機器の扱い方も細やかに検証して注意点を周知させることで、事故防止の意識を高めていきます。
臨床工学技士をサポート
高度な医療機器はほかに、人工呼吸器、人工透析装置などがあり、いずれも命に関わる機器です。それだけに、工学と医学の知識をもつ臨床工学技士の役割が重要視されています。
今後はAIも導入されていくでしょう。危険を予測する、臨床工学技士の動きをサポートするなど、AIの活用法の検証も始まっています。最新技術により、機器はますます進化します。その対応とともに、常に安全な医療を提供するための取り組みも欠かせないのです。
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先生情報 / 大学情報
東北文化学園大学 工学部 臨床工学科 教授 工藤 剛実 先生
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