講義No.14235 観光学

100年前の旅行案内・鳥瞰図に見る”ニッポン”

100年前の旅行案内・鳥瞰図に見る”ニッポン”

100年前の旅アイテム

あなたは何を見て旅行の行先を決めますか?
今から約100年前、大正から昭和初期にかけて、吉田初三郎は数多くの旅行案内・鳥瞰(ちょうかん)図を描きました。当時の人たちは、彼が描いた旅行案内絵図を手にして旅をしたことでしょう。
鳥瞰図とは、空を飛ぶ鳥の目から見たらこんなふうに見えるだろうと想像して描かれた絵図のことです。彼の絵図は色使いが美しく、「きれいでわかり易い」と当時の皇太子(後の昭和天皇)が称賛したとのことです。日本全国から製作依頼があり、その数は1600点以上もあります。

見て楽しくなる仕掛け

旅行には、「旅マエ、旅ナカ、旅アト」という3つのシーンがあります。旅マエはどこで何をするか計画を立てる時、旅ナカは旅行中、旅アトは旅行が終わって余韻にひたる時のことです。それぞれのシーンは、観光産業全体にとって重要なアプローチのポイントです。
吉田初三郎の旅行案内・鳥瞰図は、主に旅マエ情報として、地形をデフォルメして目的地を見やすいよう工夫しています。ターゲットも明確で、ファミリー向けには遊園地、レジャー施設を、遠足や職場旅行向けには、名所旧跡や行楽地を、細かく、大きく描き、絵の裏にはおすすめポイント、解説が添えられています。さらに、実際には見えない、ハワイ、サンフランシスコなど、海の向こうにある国や地域の方角がわかるように描いたものもあります。彼の絵図は見るだけで、わくわくする仕掛けがたくさんあります。

現代のヒントに

あるホテルから製作を依頼された観光案内はインバウンド向けに、観光施設名などはローマ字で書かれています。また、鉄道会社から製作を依頼された沿線案内は、売り出したいスポットは大きく強調して描くなど、ビジネスの意図も読み取ることができます。
こうしたプロモーション手法からは、押し付けではなく、自然に足を運びたくなる仕掛けが大切であることがわかります。100年前から現代に至るまで、観光プロモーションの歴史をたどることで、現代へのヒントが見えてきます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

帝京平成大学 人文社会学部 観光経営学科 教授 野島 徹 先生

帝京平成大学 人文社会学部 観光経営学科 教授 野島 徹 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

観光学

先生が目指すSDGs

メッセージ

修学旅行やご家族での旅行など、あなたにも旅行の思い出がたくさんあるでしょう。1回の旅行にも、いろいろな人が関わっています。旅先にはどんな人がいましたか。ホテルやレストラン、お土産屋、鉄道や観光バス、ツアーの企画や添乗員など、そこで働く人たちと直接・間接的に接点がありましたね。是非思い返してみてください。観光産業は、旅行者との接点を大切にすることにより、旅行者から「ありがとう」といわれるビジネスです。興味がありましたら、ぜひ一緒に学びましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

帝京平成大学に関心を持ったあなたは

「実学の総合大学」、帝京平成大学。
首都圏の4つのキャンパスには、あなたの学びたい思いに応える医療からグローバルまで5学部18学科の学びがあり、約10,000人の学生が学んでいます。各キャンパスでは“実学”を徹底的に重視した教育や実践の場を用意。地域の医療や暮らしに関する拠点となる施設・環境を整え、学びに応じた実学教育を展開。学生は実習を積み重ね、キャリアに直結する実践能力を身につけます。