100年前の旅行案内・鳥瞰図に見る”ニッポン”
100年前の旅アイテム
あなたは何を見て旅行の行先を決めますか?
今から約100年前、大正から昭和初期にかけて、吉田初三郎は数多くの旅行案内・鳥瞰(ちょうかん)図を描きました。当時の人たちは、彼が描いた旅行案内絵図を手にして旅をしたことでしょう。
鳥瞰図とは、空を飛ぶ鳥の目から見たらこんなふうに見えるだろうと想像して描かれた絵図のことです。彼の絵図は色使いが美しく、「きれいでわかり易い」と当時の皇太子(後の昭和天皇)が称賛したとのことです。日本全国から製作依頼があり、その数は1600点以上もあります。
見て楽しくなる仕掛け
旅行には、「旅マエ、旅ナカ、旅アト」という3つのシーンがあります。旅マエはどこで何をするか計画を立てる時、旅ナカは旅行中、旅アトは旅行が終わって余韻にひたる時のことです。それぞれのシーンは、観光産業全体にとって重要なアプローチのポイントです。
吉田初三郎の旅行案内・鳥瞰図は、主に旅マエ情報として、地形をデフォルメして目的地を見やすいよう工夫しています。ターゲットも明確で、ファミリー向けには遊園地、レジャー施設を、遠足や職場旅行向けには、名所旧跡や行楽地を、細かく、大きく描き、絵の裏にはおすすめポイント、解説が添えられています。さらに、実際には見えない、ハワイ、サンフランシスコなど、海の向こうにある国や地域の方角がわかるように描いたものもあります。彼の絵図は見るだけで、わくわくする仕掛けがたくさんあります。
現代のヒントに
あるホテルから製作を依頼された観光案内はインバウンド向けに、観光施設名などはローマ字で書かれています。また、鉄道会社から製作を依頼された沿線案内は、売り出したいスポットは大きく強調して描くなど、ビジネスの意図も読み取ることができます。
こうしたプロモーション手法からは、押し付けではなく、自然に足を運びたくなる仕掛けが大切であることがわかります。100年前から現代に至るまで、観光プロモーションの歴史をたどることで、現代へのヒントが見えてきます。
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先生情報 / 大学情報
帝京平成大学 人文社会学部 観光経営学科 教授 野島 徹 先生
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