量子コンピュータ・電子の波を作る素子をデザイン
量子コンピュータの開発に向けて
これまでのデジタルコンピュータに対して、次世代となる量子コンピュータの開発・普及が急がれています。量子コンピュータは、従来のコンピュータが不得手だった、社会の複雑な問題を早く解決することに役立ちます。電子の波を起こして計算を行うのですが、非常に微細な世界なので制御が容易ではありません。現在、半導体を用いた量子ビットの数は1桁でしかなく、スマホでも使われている電子素子の最先端技術を用いて、何万、何億まで制御できる素子と回路を開発していくことが、世界中の研究者の課題となっています。
シミュレーションで電子の波を起こす
半導体で制御する量子コンピュータを開発していく場合を考えてみましょう。半導体素子の最も短い部分の長さは、シリコン原子20個以下の非常に微細な世界です。その世界では、電子が波であるという性質が出てきます。「電子の波」は当然目に見えませんが、水の入ったバケツを揺らすと、定在波の決まった形で山と谷になる、そのようなふるまいのことを指します。研究開発では、その波をコンピュータでシミュレーションして可視化します。三次元CADなどを用いて、量子コンピュータをデザイン・設計していくわけです。電子の波はデリケートで、すぐに壊れてしまうため、より長く保てる波が作れる素子のデザイン、そしてその素子を効率的に読むための電子回路が必要となります。
量子とAIが結びついた世界
量子コンピュータとAIが結びついたとき、社会の複雑な問題を解決することが期待されています。身近にある交通渋滞の緩和も一例です。ビジネスのさまざまな課題解決はもちろん、アルバイトのシフト表を組むといった作業も、実は組合せ最適化問題を解決しやすい量子コンピュータが向いています。世の中はどんどん複雑になっているので、組合せ最適化問題はいたるところにあるといえるでしょう。コロナウイルスのような新しい感染症を起こすウイルスに対抗する薬の開発についても、時間短縮のメリットが期待されています。
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帝京大学 理工学部 情報電子工学科 教授 棚本 哲史 先生
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