地理情報システムを使って、地域の未知の特色を明らかにする
GIS(地理情報システム)ができること
例えば、地域の犯罪率は、道幅や建物の密集度と深い関わりがあります。GIS(地理情報システム)を使うことで、道路や建物との地理的な関係性から、どのような都市環境で犯罪が起きやすいのかを統計的に明らかにすることができます。地域のさまざまなデータを地図に重ね合わせることで、地域にある特色を見いだし、さらにその要因を明らかにできるのです。犯罪率が高い地域がわかれば、そうした地域への集中的な対策が可能です。
地域の特色の要因を明らかにする
このような調査はほとんどの場合、すでにあるデータを用いて行われます。犯罪の内容や発生場所、発生時間などのデータは、警察から公表されています。一方で、道幅や建物の密集度も地図データから調べることができます。この2つをいかに結びつけるかは、研究者の手腕にかかっています。もちろん、最初から2つのデータの因果関係に到達できるわけではありません。最初は、複数の要素を候補としてあげ、データ解析を行います。また、犯罪の発生要因にはさまざまな学説があります。それらを参考にしながら、犯罪発生の要因を絞り込み、地域の傾向を明らかにしていきます。地域によって犯罪率に差があることは、一次データを見れば明らかですが、なぜその格差がみられるのかという要因まで解析しなければ、地域の特色がわかったとは言えません。その根拠となる情報を、GISが提供してくれるのです。
歓迎されないデータも有効な知見
地域の特色は、地域に住む人々に歓迎されるデータならば公表しても問題ありませんが、逆の場合はデリケートな問題を含みます。例えば、悪い結果が出れば資産価値に影響するかもしれません。そのため、多くの場合公表されることはありません。しかし、都市問題の解決においては重要な知見です。まちづくりや都市計画を成功に導くためには、あらかじめ問題となる要因を把握し、解決していくことが必要だからです。
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先生情報 / 大学情報
福岡工業大学 社会環境学部 社会環境学科 准教授 上杉 昌也 先生
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