“弁当プロジェクト”が被災地の経済を救う!
支援が被災地の経済的復興を遅らせる?
災害からの復興について、あるエピソードを紹介しましょう。
大規模な地震や台風などの被害は、人命に関わるだけでなく、地域の経済も大きな打撃を受けます。道路や鉄道などのインフラ(生活基盤)が寸断され、企業や商店の設備は損傷します。そのため被災地の道路や施設、家屋の補修には、他地域から業者が派遣されることが多く、実はこれが地元業者の経済的復興を遅らせる一因となっているのです。また、食料や衣料などの支援物資も各地から届きますが、そうすると地元の小売業者はモノを売れなくなってしまいます。善意で行われるさまざまな支援が、結果的に被災地の経済的な立ち直りを遅らせてしまうことがあります。
地元が立ち上がった“弁当プロジェクト”
2004年の新潟県中越地震の際に、被害を受けた小千谷市で“弁当プロジェクト”が生まれました。これは被災した地元の飲食業者などが提携して、避難生活をしている被災者やボランティアなどへ弁当を提供する事業です。被災業者がどうやって弁当を作るの?と思うかもしれませんが、それぞれが使える設備などを提供し合い、例えばお米が炊けなければ地元の大手米菓メーカーに炊飯を依頼するなど、さまざまな地域の企業、団体が協力し合って立派に弁当の供給ができました。従来は「そんなことは無理だろう」と考えられていたことが実現できた意義は大きいものでした。
被災地に仕事が生まれることの意義
被災地で弁当作りの活動ができれば、被災地に仕事が生まれ、地域の人々の生活再建や精神的な支えの源になります。人間にとって「自分に仕事があり、自分の足で立ち直る気力を得る」ことは、義援金や生活物資の援助では得られない大きな意味があり、地元の業者と被災者が一丸となり、被災地に復興への希望が生まれます。飲食業以外でも建築業や清掃・補修用品関係業者など、地元のネットワーク次第で自給自足できるものがあるはずです。災害復興に関する「発想の転換」が、地域の経済や人々の心の回復の手助けになるのです。
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先生情報 / 大学情報
関西大学 社会安全学部 安全マネジメント学科 教授 永松 伸吾 先生
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