物流革命! 「フィジカルインターネット」で未来を変える

深刻化する物流の危機
物流を取り巻く環境は日々変化していますが、その運営方法はほとんど変わっておらず、多くの課題を抱えています。例えば、EC市場の成長や消費者ニーズの多様化に伴い、配送頻度の増加と荷物の小型化が進んでいます。フランスでは、過去30年で1回当たりの平均貨物重量が100kgから6.6kgへと激減しました。さらに一度の配送で運ばれる重量が減少した結果、トラックの積載率は40%以下と非効率な状態が続いています。一方で、トラック運転手は20年間で21万人以上も減少し、人手不足も深刻な状況です。
物流をネットワークで変える
その解決策として注目されているのが「フィジカルインターネット(PI)」です。PIは、インターネットにおけるパケット通信の仕組みを物流に応用したものです。パケット通信では、データを「パケット」という小単位に分割して送ることで回線の利用効率を上げ、「1対多」の接続を可能にしました。PIでは、パケットに相当する標準化された小型のコンテナを使って、共同輸送や積み替えを効率化します。これにより、物流の無駄の大幅な削減が期待されています。2010年代に概念が提唱され、日本やEUで実現に向けたロードマップが策定されています。
データで描く物流の未来像
PIの実現に向けて、ブロックチェーンやAIを活用した研究が進められています。例えば、物流拠点の配置とルートをAIで最適化することにより、新規投資なしでコストとCO₂排出量を約50%削減できることが実証されました。また、港での自動運搬車の効率化により、世界全体のCO₂排出量の0.5%削減も可能とわかってきました。PIに伴う情報と資金の流通のためには、ブロックチェーン技術が欠かせないことも明らかになっています。
さらに、貨物輸送中に災害が発生した場合などに、輸送手段を柔軟に切り替える「シンクロモダリティ」という新しい考え方や、水素エネルギーの効率的な輸送への応用など、研究は広がっています。
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神戸大学海洋政策科学部 海事科学研究科 准教授平田 燕奈 先生
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