知覚を用いない認証技術 バリアフリーCAPTCHA
人間とロボットとを識別する方法
インターネットのサービスで、アカウントの新規登録時に、画面上に表示されたゆがんだ文字を読み取り入力する手続きがあります。これはロボットによる偽のアカウント作成を防ぐために行われます。登録の相手がロボットか、実在の人間かを見分けるテストは「CAPTCHA(Completely Automated Public Turing test to tell Computers and Humans Apart:キャプチャ)」と呼ばれています。つまり、ロボットには判別できないゆがんだ文字だが、人間は識別できるという能力の差を利用して見分けているわけです。CAPTCHAの中には音声タイプもあり、これは雑音の中から特定の言葉を認識して入力する方法です。
視覚や聴覚に頼らないCAPTCHA
しかし、最近ではAIロボットの性能が上がり、そのテストをすり抜けることができるようになってきました。また、視覚や聴覚が不自由な人に配慮したCAPTCHAも求められています。
そこで、人間の知覚に頼らない認証技術の研究が進められています。その一つが、人間のみが持つ、文意文脈を解釈する能力を使った「バリアフリーCAPTCHA」です。
意味がある文を見分けさせる
バリアフリーCAPTCHAでは、例えば「ワードサラダ」を使ったテストを行います。ワードサラダとは、例えば「定休日と食べる子どもは旅行と言える」といった文章です。これは文法的には正しいものの意味が全くわからない機械合成文です。これを文の選択肢の中に入れて、どれが自然な文章なのかを答えさせます。文法だけで日本語の文と認識するAIロボットには、意味がある文とない文の区別がつかないのです。ただ、選択肢から選ぶ方法だとAIがたまたま正解することもあるため、何度かテストをするといった方法で安全性を高めています。
このテストであれば、人間は文字拡大や音声の読み上げ、点字などを用いることで、文章を「読む(アクセスする)」ことができます。
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筑波技術大学 保健科学部 情報システム学科 教授 岡本 健 先生
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