一石三鳥のエコシステム:家畜ふん尿バイオガス

一石三鳥のエコシステム:家畜ふん尿バイオガス

においが問題に

北海道は、国内の生乳生産量の50%を占める酪農王国です。80万頭もの乳牛が、1頭当たり1日40lの生乳を生産しています。しかし、乳牛が生み出すのは生乳だけではありません。1頭あたり1日65kgのふん尿も排せつしており、80万頭分ともなるとその量は膨大です。多くのふん尿は屋外で堆肥化されますが、その際に出るにおいが問題になっています。特に、農村地域でも住宅街が隣接するようになった現在では、自治体への苦情も増加傾向にあります。

家畜ふん尿で発電

その解決策として、ふん尿の「バイオガス」としての利用が研究されています。バイオガスはバイオマスをメタン発酵してつくられる可燃性ガスのことです。バイオガスを集めて、そのガスを燃焼させればエネルギー資源として利用できます。酸素のない環境を好む微生物の活動によるメタン発酵は、密閉した空間でふん尿処理を行うために、ふん尿の処理過程で生じるにおいが外に漏れることはありません。乳牛およそ15頭分に相当する1tのふん尿からは30~35m³のバイオガスが発生します。北海道内の80万頭の乳牛ふん尿をすべてバイオガス化した場合、1日に120万kWhの電力が得られます。これは道内の約5%である約13万世帯の電力に相当します。バイオガス発電は、太陽光発電や風力発電と同じ再生可能エネルギーに位置付けられますが、太陽光や風力と違って天候に左右されることがありません。
(注:バイオマスとは、生物由来の再生可能な資源のこと)

今後の課題

しかも発酵を終えたふん尿は、バイオガスを採取した後でも肥料として必要な窒素・リン酸・カリウムの成分が残っているので、液肥として利用可能です。つまりバイオガスは臭気の問題を解決し、エネルギーと肥料を生み出す一石三鳥のエコシステムです。一方で、普及には施設の高い建設コストの問題を乗り越える必要があります。環境への配慮、コスト、そしてエネルギー問題を考えながら、資源としてのバイオマスをどのように活用していくかが今後の大きな課題です。

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酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類 准教授 石川 志保 先生

酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類 准教授 石川 志保 先生

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メッセージ

誰もがいつかは自立しなければならず、そのためには好きなことを仕事にできるのが理想です。好きなことなら、きっと長く続けられるからです。まずは、自分の好きを見つけるためのアンテナを張ってみましょう。そして、高校生のうちにアンテナに引っかかったことを試してみましょう。もしかしたら、好きだと思っていたことが実はそうではなかったということもあるかもしれませんが、それでも大丈夫です。好きなことをたくさん見つけておけば、選択肢が広がります。本当に好きで夢中になれることを見つけましょう。

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北海道の政治・経済の中心都市札幌から快速電車で10分、本学はそこに132haの広大なキャンパスを構えています。世界の人口が増幅を続ける中、40%前後の我が国の食料自給率は、今後ますます問題となるのは確実です。そうした環境下にあって、大地を健やかに育て、健康な食物を育み、それを食して健やかな人が育つ。こうした「循環と共生」をテーマに掲げながら、学生一人ひとりの個性や能力を最大限に引き出せるような教育を実践することを使命と考えています。