レンズやミラーで光を操る「レンズデザイナー」とは
光を操るレンズデザイナー
「レンズ」は写真用カメラやメガネをはじめ、自動車や医療機器などさまざまなものに使われています。そのレンズをデザインして、それらの機器の目的に合うように光を操るのが「レンズデザイナー」の仕事です。レンズのデザインには数学や物理の知識だけでなく、光がきれいに曲がるような経路を作る美的感覚も必要です。
半導体製造に欠かせない
スマホのメモリなどの半導体デバイスを作る過程においても、レンズデザインの技術が欠かせません。最先端の製造技術では、回路パターンを光でシリコンに焼き付けて半導体を作ります。この半導体露光装置を使えば、約300ミリメートルのシリコン板を1時間あたり200枚焼き付けることができます。
スマホのサイズはそのままで記憶容量を上げるためには、配線をできるだけ細くしてたくさんの回路を入れなければなりません。配線の細さは光の波長に比例するため、髪の毛の5千分の1ほどの配線を焼き付けるのに、紫外線より波長が短い「極紫外(EUV)」が使われています。このEUVをレンズデザインの技術で操ります。ただしEUVはガラスを透過しないため、レンズの代わりにカーブのついた鏡を用います。回路パターンを縮小して、全体を速くくっきりと焼き付けられるように、10~20枚の鏡を使って反射の経路を作ります。ミラーの作用を熟知したレンズデザイナーの職人的な技術と、コンピュータによる数値計算を組み合わせて、最適なミラーの配置を決めていきます。
原子の色が見える?
半導体露光装置と同じ原理を使ったEUV顕微鏡は、光学顕微鏡でありながら、電子顕微鏡や走査プローブ顕微鏡に匹敵する10ナノメートル程度の分解能を持っています。EUV顕微鏡の特徴の一つは原子の色が見えることです。波長が非常に短いEUVは原子の内部にまで入り込めるため、原子ごとの電子の並びの違いが色となって表れるのです。EUV顕微鏡は現在世界に数台しかなく、実用化をめざした開発が進められています。
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