知ってる人が得をする 株価に表れる「モメンタム」とは
「モメンタム効果」とは
株式市場において、値上がりした銘柄の価格がさらに上昇したり、値下がりした銘柄の価格が下落したりするなど、相場が一方向に進みやすい傾向を「モメンタム(momentum)効果」といいます。これはアノマリーという、「明確な根拠はないものの、経験則的にそうなっているという事象」の1つです。投資家の心理がその出現に影響するモメンタム効果は世界各国の市場で観測され、自信過剰な投資家が多いほど出やすいと言われます。自分が買った株が値上がりすることで自信を深め、再び同じ株を買うことでさらに株価が上がるというわけです。日本人はこうした「成功は自分の能力のおかげ、失敗は自分以外の原因のせい」と考える傾向が弱いため、日本市場ではこの効果が出ないとされてきました。
モメンタム効果を検証すると
それでも、日本でのモメンタム効果をデータで示した研究があります。従来の測定指標が、一定期間の「初めと終わりの価格の比較」であるのに対して、研究では期間内の「値動き」が注目されました。1990年代から30年ほどの期間内の、東証に上場するすべての銘柄の株価を「A:初めから最高値まで」と「B:最高値から終わりまで」の2つに分解して、それぞれの値動きを統計的に分析したのです。するとAはBよりも株価の下落リスクが低く、効率よくリターンが得られる傾向が示されました。さらにBは、Aとは逆の傾向を持つことも確認されました。つまり日本市場でもモメンタム効果と同様の傾向が確認されただけでなく、より低いリスクでリターンが得られる戦略の存在が示唆されたのです。
まだ発見されていないアノマリーも
モメンタム効果のようなアノマリーに基づく投資戦略は、知っている人だけが得をします。周知されればアノマリーの効果は消失する可能性があるため、プロの投資家にとってアノマリーは企業秘密です。統計的手法で株価の規則性を分析して、まだ発見されていないアノマリーを見つけることで、有益な投資戦略につなげる研究が活発に進められています。
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