深刻化する農村の人手不足 労働力をどう考える?

一戸あたりの耕地面積が増える
近年、過疎化や高齢化のため、農業も酪農も人手不足が深刻になってきています。農林水産省によると、令和6年の農業従事者の平均年齢は69.2歳です。岩手県では、1995年から2015年の20年間で農家の数が約8万戸から約4万戸と半減しました。しかし、全体の耕地面積はそれほど減ってはいません。農地が耕作放棄地になると、害虫や害獣の住処になって近隣の農家にも影響が及ぶため、近隣の農家が土地を借り入れているのです。その結果、農家一戸あたりの規模が大きくなってきていることが現代農業の特徴です。規模が大きくなると家族経営だけでは成り立たず、とくに農繁期には外部の労働力を必要とします。
人材派遣が農家を救う?
かつて農繁期の労働力は、パートやバイトで補っていましたが、近くで働ける人が減り、パートも集まらなくなってきています。そこで始まったのが、都市からの人材派遣です。ただし、それぞれの農家ではスポット的に労働力を必要としている一方で、法律で31日未満の派遣契約は禁止されています。
聞き取り調査の結果、ある会社では、複数の農家を組み合わせることによって31日以上の仕事を作り、農家に人材を派遣していました。また、農業経験の浅い労働者のスキルを上げるために、ある程度似た作業を組み合わせることで、農家へ安定した労働力を提供する仕組みを作っていたのです。
一次産業の衰退を食い止めるために
人材を派遣できるのは、都市から数十km以内の範囲が限界です。都市から遠い農家や離島などでは人材派遣が難しいため、農作業を請け負う組織である「コントラクター」や外国人技能実習生などを組み合わせて労働力を調整する必要があります。そこで、岩手県滝沢市や八幡平市の酪農コントラクター事業運営事例などにも注目し、労働力を調整するシステムの研究が進んでいます。問題点と成功事例とを分析すれば、人手不足による一次産業の衰退を食い止めるためのヒントが見つかるはずです。
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