「生きたことば」が育つ国語の授業とは?
授業中の発言は子どもの本心とは限らない
教科書を使って進める国語の授業では、教師の発問に対する答えが1つとは限らないことがよくあります。例えば物語から受け取るメッセージなどは、いろいろあっていいはずです。ところが子どもたちは、目の前の先生が「教えようとしていること」に添うように発言をすることがあります。「正しいことを言わないといけない」「違ったことを言うと周りからどう見られるか」などを考え、自分の思った通りに話すことをためらってしまうのです。教師は、子どもたちが抱える「言いづらさ」と向き合うことを忘れてはなりません。
授業の中に対話の場をつくる
教師の意図した内容と異なることを答えたからといって、その子どもは学びが劣っているわけではありません。1人だけ答えが違ったとしても、否定したり切り捨てたりせずに、きちんと受け止めてあげることが必要です。そして、「なぜそう思ったのか」を、その場で聞き出してあげるのです。先生の寛容な態度は子どもたちにも伝わり、子ども同士でも「実は自分もこんなふうに思っていた」と話しはじめます。発言が正しいかどうかではなく、疑問に感じたこと、違うと思うこと、ことばにしにくいことなどを、授業の中で話せる場をつくることが大切です。
考えの途中を話しながら、共にことばを紡いでいく
考えの途中で発することばには、本心がたくさん含まれています。しかし、考えがまとまらないと言いにくいという子もいます。ノートに書いたことを読み上げれば安心という子もいます。「考えの途中でもいいですよ」と促しても、不確かなことばに対する周りの反応が気になって、うまくことばにできないのです。
不確かさに寄り添う対話をすれば、自分と同じように感じている他者の存在を知り、多様な考えや価値観に出合えます。それらを認め合うことを学び、子どもの「生きたことば」も育ちます。考えの途中を話しながら、共にことばを紡いでいくことはとても楽しいのだと、子どもに体験させることも国語の授業の大切な役割なのです。
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玉川大学 教育学部 教育学科 准教授 山田 深雪 先生
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