ソーシャルスキル教育で子どもの対人関係を支える

ソーシャルスキル教育で子どもの対人関係を支える

子どものソーシャルスキルの把握

子どもたちのメンタルヘルスの問題に向き合うためには、支援の対象となる子どもの考え方や振る舞い方の特徴を正しく把握することがとても大切です。その中でも、対人関係上のコミュニケーションを円滑に行うための技能は「ソーシャルスキル」と呼ばれており、周りの人たちとの適応に大きく関わってきます。
多くの場合、ソーシャルスキルは成長に応じて段階的に自然と身についていきますが、例えば発達障害のある子などは、他の子どもたちとの習得度のギャップに苦しむことがあります。しかし、その子のつまずきを具体的に把握することで、どのような部分を補う必要があるのか、もしくはその特徴が不利にならないような環境調整の手立てを検討することができます。

客観的に測定することの意義

ソーシャルスキルの測定方法の一つとして、心理学の研究に基づいて作られた、アンケート形式の質問項目(心理尺度)に答えてもらうというものがあります。ソーシャルスキルの問題は、子どもを注意深く観察していれば気づける場合もあります。しかし、支援者はすべての場面を観ている訳ではありませんし、子どもの自分自身に対する評価と一致しないこともあります。このように、観察だけではなかなか判断することができない状況を含めて知るために、決められた質問に答えてもらう形をとることで、本人や学級全体の状況を分析したり、トレーニングを行う際にはその前後の比較が可能になります。

教師の創造力に期待して

こうした客観的な調査の結果をもとに、学校など教育現場で「ソーシャルスキル教育」というプログラムが実施されています。ただし、こうしたプログラムは、子どもや学級の事情に合わせてアレンジしなくては効果を発揮できません。同じ教科書を使っていても教師によって教え方が違うように、教師には個々の状況に応じたアレンジを下支えするための創造力が期待されているのです。既存のプログラムの「余白」部分をどのように埋めていくのか、柔軟性のある対応が求められています。

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弘前大学 教育学部 学校教育講座(心理) 助教 新川 広樹 先生

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メッセージ

誰かの役に立ちたい、という思いで勉強に励む人は多いでしょう。目の前にいる人に関わろうという視点は大事ですが、もう少し視野を広げて、目の前にいない人に対しても貢献できるように専門性を高めていく、と考えてみるのはどうでしょう。自分一人のスキルを磨いて終わりではなく、その分野全体がどうしたらよくなっていくかという課題意識を持つと、取り組み方も変わっていきます。さまざまな課題を抱えたこの社会をどう変えていくか、あなたのような若い人こそが、その可能性を秘めているのです。

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弘前大学は、人文社会科学部、教育学部、医学部、理工学部および農学生命科学部の5学部からなる総合大学で、すべての学問の基礎的領域をカバーしています。
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