肝臓がん発症の未来予測と予防を目指して
30回分裂すると早期がん
がんの始まりは、体内にできた1個のがん細胞です。細胞分裂により1個が2個、4個、8個と倍増して、約30回分裂するとCTやMRI、PETなどの画像検査で見つかる「直径1cm、重さ1g」になり、早期がんと診断されます。この時点で外科手術により摘出するのが理想ですが、見つかった大きさが100gや200gであれば進行がんと診断されて、抗がん剤(化学療法)や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤などを使用した薬物治療も行われます。しかし、その効果が出る割合は2~3割程度と決して高くないのが現状です。
ゆっくり成長
がん細胞の分裂速度は、がんの種類によって異なりますが、平均して3カ月に1回です。30回分裂して早期がんと診断できるようになるまで90カ月、7年半ほどかかります。そこからさらに10回分裂するとがんは1kgの塊になり、人は死に至りますが、そこまで2年半しかありません。特に肝臓がんは年間約3万人が亡くなる難治性のがんであり、早期発見・早期治療が何より効果的です。
そこで今注目されているのが、画像検査が可能な1cmよりもっと小さい、「1mm」の腫瘍マーカーを発見できる検査薬です。1mmの段階から継続して検査をすれば、早期治療にもつながります。
膜成分で肝臓がんを予測する
その検査薬の特徴は、ほんのわずかな血液で検査ができることです。細胞が生きるために必要な膜成分を構成するラミニンというタンパク質に着目して、その中に発現する「肝臓がんに特異的な成分」を測定してがん化の未来を予測するという手法です。
また、肝臓がんの発生を予防する飲み薬の開発も進んでいます。肝臓を元気にする「HNF4A」というタンパク質は、同時にがん抑制遺伝子の働きを活性化させて、がん細胞の分裂周期を止める働きがあります。飲み薬として使うことでがんの進展を抑えられると考えられています。
かつて国民病とも言われた肝臓がんの発症を予測して予防する未来は、そう遠くはないのです。
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