講義No.10979 医学

脂肪由来の間葉系幹細胞が、肝臓を再生する?

脂肪由来の間葉系幹細胞が、肝臓を再生する?

再生医療に用いられる間葉系幹細胞

機能不全に陥った臓器や皮膚、骨などの組織を、細胞を用いて再生を図ることを再生医療といいます。再生医療で用いられる幹細胞に「体性幹細胞」があり、そのうちの1つが「間葉系幹細胞」です。これは骨髄や脂肪組織に存在し、骨や歯、脂肪細胞などの細胞に分化します。この細胞の最大の特徴は、サイトカインやエクソソームという物質を分泌することです。間葉系幹細胞は炎症を抑えたり、血管を作ったり、臓器が炎症後の治癒過程で生じた「線維化」した臓器の線維化を改善したりする力があります。

肝硬変を改善するための臨床治験

間葉系幹細胞を使った肝硬変の再生医療の、安全性、有効性を検証する臨床治験が進んでいます。肝硬変のある肝臓では線維化が進み、再生能力が低下しています。大学で行われた世界で初めての臨床研究で、末梢静脈から自己骨髄細胞を投与することで、線維化が改善され、肝臓の再生も誘導されることが確認されました。
最初の臨床研究では自分の体から採取した自己骨髄細胞を使用していましたが、現在は他人の脂肪組織から採取し作成した間葉系幹細胞による臨床治験が進んでいます。脂肪組織由来の間葉系幹細胞は、再生促進因子、線維化改善能力や免疫抑制能力が高いこと、医療廃棄物などからも集められることなどのメリットがあります。間葉系幹細胞を用いた再生医療は、心筋症やIgA腎症などにも応用され、さらに広く用いられることが期待されています。

新型コロナウイルス感染症の治療にも?

新型コロナウイルス感染症では、免疫系細胞からサイトカインが過剰に分泌されて制御不能となり、肺の線維化が進んでしまう症状がみられます。このサイトカインの暴走を抑制して症状を改善するために、間葉系幹細胞、エクソソームの研究が世界中で進められています。間葉系幹細胞から出るエクソソームという物質は、細胞に対して免疫や炎症を抑える機能も持っています。間葉系幹細胞の研究は、世界に広がる感染症に立ち向かうためにも欠かせないものとなっています。

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先生情報 / 大学情報

新潟大学 医学部 医学科・消化器内科学 教授 寺井 崇二 先生

新潟大学 医学部 医学科・消化器内科学 教授 寺井 崇二 先生

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医学、再生医学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたが医師になって医学に携わりたい、将来は再生・先端医療の研究をしたいと思うなら、高校時代に生物・化学・英語などの基本をしっかり押さえることが大切です。そして大学に入ったら、友人をたくさん作ってください。私は大学院卒業後、アメリカ国立がん研究所の客員研究員として遺伝子同定などの研究をしていましたが、そこで世界中の研究者とつながりを持つことができました。サイエンスは常に変化・進化しています。そして世界は広いです。世界中の研究者とつながることで、常に最新の知見を得ていってほしいと思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

新潟大学に関心を持ったあなたは

新潟大学は教育面を最も重視し、学生が自らの専門を深く極めるばかりでなく、広い視野をもち、物事を総合的に判断する力を身につけること、及び実践と体験を通したきめ細かい教育を行うことによって、学生一人一人の個性を伸ばすことを目指しています。さらに、教養教育と専門教育を融合させた教育プログラムを提供し、特定の課題・分野の学習成果を認証したり、異なる学部の学生と教職員で構成されるグループが地域住民とのふれあいを通じて人間的成長を目指すなど、本学の理念である「自立と創生」に基づく学生育成を実践しています。