「電離圏」どうなってる? 上空の電波環境をロケットで知る

「電離圏」どうなってる? 上空の電波環境をロケットで知る

実は身近な電離圏

「電離圏」とは、地上から高度約60km上空にある電気を帯びた大気の層です。私たちが普段使っている機器には、電離圏と関係の深いものが少なくありません。例えばAMラジオや電波時計は、送信所から発せられた電波が電離圏に反射して機器に届くこともあります。夜になると外国など遠くのAM放送が聞こえるのは、昼間に比べて電離圏の高さが20kmほど高くなるからです。また、衛星放送やGPSの電波は電離圏を通過して地上に到達しています。
太陽活動の活発化などで電離圏が乱れると、これらの利用に障害が生じてしまうことがあります。電離圏の異常現象についてはまだわからないことも多く、観測ロケットを打ち上げて電離圏を調査する研究が行われています。

ロケットで電離圏の状態を観測

観測ロケットには、宇宙からの微弱な電波もとらえられるような高感度な電波受信器など、用途に応じた観測器や周辺機器が載せられます。例えばAMラジオが地上で聞こえないときの電離圏の調査では、ラジオ電波の受信器を載せたロケットが打ち上げられ、本来電波が届かないはずの上空で電波がとらえられました。つまり電離圏の電子密度がなんらかの原因で低下して、ラジオの電波が電離圏で反射せずに通過してしまっていたのです。
電離圏の電場や磁場など観測ロケットで得られたデータは、電離圏での異常現象の解明に役立てられて通信障害の警告システム構築にもつながることが期待されます。

宇宙の観測技術を海中へ

電離圏での高感度な観測技術は、ほかにも応用できます。中でも検討されているのが漁業での活用です。電波は水中で大きく減衰するため、特に海中での利用は不可能だと考えられていました。そのため魚群探知機などには音波が使われていますが、経験が伴い、判断が困難な場合があります。もし電波を使って定置網にかかった魚の量がわかれば、必要な船の数や氷の量がわかります。人手不足が問題となっている漁業の合理化のためにも、高感度受信機を使った海中での電波利用が模索されています。

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富山県立大学 工学部 電気電子工学科 教授 石坂 圭吾 先生

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メッセージ

私たちの世代では、機械好きな子はよく電化製品などを分解して遊んだものです。ところが今では技術が発展しすぎて分解できるものはほとんどなく、物を作ったり分解したりする経験は得られにくくなっています。私たちの研究室では、シミュレーションだけでなく、実際に電波受信器を回路図から描いて自分で作るといった体験を重視しています。手を動かすのが好きで、そうした体験を通じて見えない電波を体で感じたいなら、ぜひ一緒に研究しましょう。

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