講義No.12107 看護学

同じ視点でも考えていることが違う 看護師の思考過程を考える

同じ視点でも考えていることが違う 看護師の思考過程を考える

経験値によって変化する臨床判断

看護師は病室で患者のどこを見て、何を考えているのでしょうか。看護師が現場を確認し考えることは「臨床判断」と呼ばれ、看護学生はもとより、看護師は経験を重ねるごとに変化していきます。例えば点滴の場合、学生や経験の浅い看護師は「点滴をしている」と確認をするだけですが、ベテラン看護師になると「針から液が漏れていないか、患者が動く際に外れないか」などと考えます。こうした考えの違いをデータとして集積するために、眼球運動の動きを捉えるアイカメラを使った調査や研究が行われています。

アイカメラを使って調査、データ化

この調査では、まず学生や看護師にアイカメラを装着して病室や患者の状態を見てもらいます。その後、見たことから何を考えたかについてインタビューを行い、データを集約します。その結果、学生も看護師も見ているところは同じでも、看護経験を重ねるうちに状況把握から推論し、ケアを決定する直感力が早く正確になっていくことがわかります。
これらの客観的な視点と思考過程を組み合わせたデータを学生が講義で学び、実習で応用することで、観察力や技術力が養われ、「見落とし」や「見過ごし」を防ぐことができます。また手術後の患者や高齢者など、多様な看護現場でのケアについて、考えるヒントにもなります。さらに看護師にとっても自らの思考過程を可視化することで、自分の看護についての内省やモチベーションアップにつなげられます。

VRやARを取り入れた教育システムも

さらに研究では、VRやARを使った看護教育システムの構築も進められています。例えば滅菌手袋のはめ方や、静脈内注射の方法などは、実習では指導者の横や正面からしか見ることができません。VRであれば、実際に行っている人の目線で見られるので、正確に学ぶことができます。VRやARなどの工学的な要素を取り入れた教育システムの研究は、これからの看護技術をさらに高めることが期待されます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

富山県立大学 看護学部 看護学科 基礎看護学 准教授 林 静子 先生

富山県立大学 看護学部 看護学科 基礎看護学 准教授 林 静子 先生

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看護学

先生が目指すSDGs

メッセージ

看護師は病院での勤務だけではなく、海外の医療機関や予防医学関連の仕事、研究職、教員など多種多様な道が広がる職種です。自分が考えていることや、やってみたいと思うことはどんどん挑戦することができ、精一杯取り組んでいれば状況も変わって次のチャンスが開けていきます。
こうしたタイミングを得る、また自分がやってみたいと思うことをかなえるためには、人との関わりが大切です。日頃から人に興味を持ち、多くの人と関わって、さまざまな経験や知識を身につけておきましょう。

先生への質問

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本学は、1990年の建学以来、創造力と実践力を兼ね備えた人材育成や高度な研究開発、産業界との連携による地域貢献を果たしながら、最適な教育・研究環境を整えてきました。
2024年4月には、「情報」を軸とする工学の専門知識と、データサイエンスの専門知識を兼ね備え、デジタルの力を活用して社会の潜在的課題の解決策を導き出す能力を持った人材を育成する、「情報工学部」を新設しました。新しい校舎も建設予定です。
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