同じ視点でも考えていることが違う 看護師の思考過程を考える
経験値によって変化する臨床判断
看護師は病室で患者のどこを見て、何を考えているのでしょうか。看護師が現場を確認し考えることは「臨床判断」と呼ばれ、看護学生はもとより、看護師は経験を重ねるごとに変化していきます。例えば点滴の場合、学生や経験の浅い看護師は「点滴をしている」と確認をするだけですが、ベテラン看護師になると「針から液が漏れていないか、患者が動く際に外れないか」などと考えます。こうした考えの違いをデータとして集積するために、眼球運動の動きを捉えるアイカメラを使った調査や研究が行われています。
アイカメラを使って調査、データ化
この調査では、まず学生や看護師にアイカメラを装着して病室や患者の状態を見てもらいます。その後、見たことから何を考えたかについてインタビューを行い、データを集約します。その結果、学生も看護師も見ているところは同じでも、看護経験を重ねるうちに状況把握から推論し、ケアを決定する直感力が早く正確になっていくことがわかります。
これらの客観的な視点と思考過程を組み合わせたデータを学生が講義で学び、実習で応用することで、観察力や技術力が養われ、「見落とし」や「見過ごし」を防ぐことができます。また手術後の患者や高齢者など、多様な看護現場でのケアについて、考えるヒントにもなります。さらに看護師にとっても自らの思考過程を可視化することで、自分の看護についての内省やモチベーションアップにつなげられます。
VRやARを取り入れた教育システムも
さらに研究では、VRやARを使った看護教育システムの構築も進められています。例えば滅菌手袋のはめ方や、静脈内注射の方法などは、実習では指導者の横や正面からしか見ることができません。VRであれば、実際に行っている人の目線で見られるので、正確に学ぶことができます。VRやARなどの工学的な要素を取り入れた教育システムの研究は、これからの看護技術をさらに高めることが期待されます。
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先生情報 / 大学情報
富山県立大学 看護学部 看護学科 基礎看護学 准教授 林 静子 先生
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