IoTの時代に可能性が大きく広がる電波応用技術
ブラックホールの撮影に成功!
2019年4月、人類史上初めてブラックホールの撮影に成功したというニュースが世界を駆けめぐりました。国際的な研究チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ」が、世界6カ所にある8つの電波望遠鏡をつなぎ合わせて地球サイズの仮想望遠鏡をつくり上げ、映像化したのです。このように、電波を使って天体を観測し、研究する学問分野を「電波天文学」といいます。20世紀以降、電波を応用してテレビやラジオ、パソコン、携帯電話、インターネット、GPSなど、さまざまな電子機器、通信機器が誕生してきました。
電波を使って計測し自動調整するシステム
電波を応用した計測システムの研究も進んでいます。Wi-Fiを使った環境計測システムが一例です。ビニールハウス内の支柱の上下にセンサをつけ、ビニールハウス内部の正確な温度と湿度を測ります。これによって屋根の開け閉めを自動でコントロールし、適度な環境を保つというものです。人間が介在しなくても、モノ同士が信号を交換し、モノ自身の判断で行動を起こすIoT(Internet of Things=モノのインターネット)の時代に入った今、電波の応用技術が果たす役割はさらに大きくなっていると言えるでしょう。
電波を応用して人の役に立つシステムを
これからの電波研究で特に期待されるのは、人を補助するシステムへの応用です。例えば、聴覚障がい者が複数の人と同時に会話する場面で、誰が何を話しているのかを瞬時に把握することは困難です。しかし、自分のスマートフォンの画面に、周りで話している会話の内容や聴こえてくる方角が表示されるアプリケーションがあったらどうでしょう。これは、音声信号処理と無線技術を使った音源位置計測デバイスを開発することで、すでに実現しています。ほかにも、高齢者の見守りや交通安全、健康機器、スポーツなど、生活の多様な場面で人をサポートするシステムの開発が考えられます。電波応用の可能性は無限に広がっているのです。
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東海大学 文理融合学部 人間情報工学科 教授 松本 欣也 先生
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