陰謀論にハマりやすいのはどんな人?
急速に広まった陰謀論
2010年代後半に入ると、例えば2016年のアメリカ大統領選や、イギリスの欧州連合(EU)離脱など、世界各国で政治に関する「陰謀論」が飛び交って問題視されるようになりました。一方で、こうしたなかで日本人は、相対的に陰謀論を信じにくいと言われてきました。ところがコロナ禍という前代未聞の事態が起こり、これをきっかけに日本社会でも陰謀論が大きな注目を集めていきます。荒唐無稽に思える陰謀論が、なぜ多くの人に信じられているのでしょうか。政治心理学では、陰謀論の背景にある人々の心理を明らかにするために、異なる情報を与えたグループの比較実験を行いながら、その因果関係を明らかにしていきます。
SNSと陰謀論をめぐるイメージと実態
「ネット右翼」という言葉はあっても「ネット左翼」とはほとんど言わないように、一般的には保守系である右派の方が陰謀論を信じたりハマったりしやすいと思われています。ところが実験を行ったところ、従来のイメージとは異なり、右寄りの人も左寄りの人も自分たちにとって「都合のいい」陰謀論であれば信じる傾向が見られました。同じようにX(Twitter)も陰謀論の温床だと思われていますが、こちらでもXの利用頻度が高い人ほど、陰謀論的信念が低いという結果になりました。とりわけ若い人ではこの傾向が強く、むしろ高齢者の方が陰謀論にハマりやすいという実態が明らかになったのです。
SNSは陰謀論の巣窟か
このような実験結果が出ているにもかかわらず、SNSは陰謀論の巣窟だと今でもみなされています。その理由の一つとして挙げられているのが「第三者効果」です。第三者効果とは、自分は冷静にものごとを判断しているけれども、自分以外の世間一般の多くはメディアに踊らされている、と錯覚してしまう、人々の心理的傾向を指すメディア研究の概念です。ある研究で、Xの利用頻度が高い人ほど第三者効果がより強く現れやすいことが発見されました。そのために「SNS=陰謀論の巣窟」という幻想があると考えられます。
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先生情報 / 大学情報
大阪経済大学 情報社会学部 情報社会学科 准教授 秦 正樹 先生
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