日本の女性公認会計士の比率が低い理由は、家計簿にある?
他国と比較した女性公認会計士の比率
現在日本では、女性の社会進出を推し進める政策が行われています。背景の一つに、企業における女性管理職比率の低さがあります。管理職に登用されやすい専門職に、国家資格を伴う公認会計士がありますが、日本におけるその女性割合も低く、20%に届きません。一方、同じ先進国の場合、アメリカは約50%、イギリスが約40%とほぼ半数が女性です。
女性公認会計士の歴史
この2国と日本では、女性公認会計士の歴史背景も異なります。アメリカやイギリスでは公認会計士制度が始まった19世紀半ばから後半、職業に男女格差があり、女性は専門職に就けませんでした。女性たちは抗議活動をして、公認会計士など専門職への道を開いたのです。一方、日本の公認会計士制度は戦後に発足し、制度上、男女平等に門戸が開かれました。日本では、女性が制度開始から公認会計士になれたのになろうとしなかったことが、現在の女性割合からうかがえます。なぜ、なろうとしないのか、解明するカギとなるのが「家計簿」です。
管理職や専門職の母集団に着目
明治以前、日本では主に男性が家計を管理していました。それが明治に入ると、女性の高等教育機関である女子高等師範学校で「良妻賢母教育」が始まりました。外で働くエリート男性を支えるために、女性は良き妻や母として家庭を守るというものです。カリキュラムには家事が含まれ、家事の一環として財産を含めた家計簿記教育が行われました。やがて、多くの家庭で女性が家計管理を担うようになったと考えられます。
女性が家計財産の責任者という大役を得たことは、現在の女性の社会進出に影響している可能性があります。女性は、家計管理に意義を見いだして、現在でも自らの意思で「家庭を守る」ことを選ぶため、女性管理職や専門職の母集団となるべき職業従事者が増えないと考察できるのです。女性の社会進出に関して、こうした母集団に対する研究の視点をもって、政策を考える必要があるでしょう。
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