ロープを使ってコンクリートを強くする

ロープを使ってコンクリートを強くする

巻くだけでコンクリートの強度が上がる!?

建物や橋梁などコンクリートの構造物を補強するのに、1本のロープを巻くだけで効果があるなんて信じられますか? 実はビニロン繊維やアラミド繊維といった有機繊維を使ったロープを巻く補強は、非常に有効性のある方法として研究が進んでいます。同じ断面積の鋼材に比べて、ビニロン繊維なら2倍、アラミド繊維なら5倍の強度があります。しかも、軽量で、腐食しない特徴があります。これらの繊維をシート状の形で使う試みもありますが、作業を迅速に行えるようにロープ状に加工して柱や梁に巻くという発想がなされました。柱や梁を壊さず外から作業できるため、建物や橋の補修などに使われることが期待されます。ただし、ビニロン繊維やアラミド繊維が高価なことが難点です。

補修・補強の重要性

2011年の東日本大震災以来、コンクリートの構造物の耐震性や老朽化した構造物の補修・補強について関心が高まっています。補修・補強を行うためには、まず構造物を診断し、どのような技術を用いて、長寿命化できるか、さらには予算面まで考えなくてはなりません。日本では高度経済成長期に急激に造られ、老朽化や耐震面で問題のある構造物がたくさんあります。しかし近年の経済事情を鑑(かんが)みても、壊して新しいものを建てるのは難しく、補修・補強の技術がより重要性を増しているのです。

コンクリートの未来に向けて

コンクリートは今後100年たっても使われ続ける建設材料だと考えられます。安価で強いという面では代わりになるものはなかなか出てこないでしょう。またコンクリートの主原料であるセメントは、スラグや古タイヤなどの廃材などを利用して作られ、エコの面でも注目されています。現在の都市生活を支えているコンクリートを安全に長く使っていくための技術開発は今後も重要なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

関東学院大学 理工学部 土木・都市防災コース 教授 出雲 淳一 先生

関東学院大学 理工学部 土木・都市防災コース 教授 出雲 淳一 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

コンクリート工学

メッセージ

私の研究室のテーマはロープ状の有機繊維を使ってコンクリート構造物の強度を上げることです。地震などの災害に対して強度が不足する構造物、経年劣化した構造物などにロープを巻くと強度が上がります。東日本大震災などの影響もあり、コンクリートの構造物の安全性に関心が高まってくると思われます。研究室の卒業生は、地方自治体や企業で道路や橋梁の維持管理などに務めている人もいます。興味を持ったらあなたもぜひ学んでみてください。

関東学院大学に関心を持ったあなたは

1884年(明治17年)、関東学院は横浜山手に神学校として創立されました。長い歴史と伝統をもつ関東学院はキリスト教の優れた思想、芸術、奉仕の精神を礎に、校訓「人になれ 奉仕せよ」のもと広く世の中に貢献できる学問・知識を身につけた有能な人材の育成を目指してきました。現在では、文理にわたる学部を擁する総合大学へと発展。伝統に裏打ちされたキャンパスライフサポート、学修サポート、キャリアサポートの3つのサポート体制で学生一人一人に合わせた支援をこれからも行っていきます。