「地理情報システム」を活用し、持続可能な物流を目指そう

「地理情報システム」を活用し、持続可能な物流を目指そう

物流サービスに欠かせないGIS

位置情報を管理し、デジタル地図上でさまざまな事象の判断や分析を行うのが「地理情報システム(GIS)」です。一般的にはカーナビやスマートフォンでの目的地ルート検索に使われていると言えばイメージしやすいでしょう。企業はこの技術を物流に使い、貨物を効率的に運んでいます。航空機や船舶、トラック、鉄道と、輸送手段の選択肢は多岐にわたります。その中からコストやスピード、貨物量を総合的に考え、最適な組み合わせで運ぶことが物流の基本です。

船舶のデータから環境負荷のモデルを構築

近年はビジネス的視点だけでなく、温室効果ガスや有害物質をなるべく排出しないルート構築も求められています。陸上や大気中だけでなく、海洋においても同様です。船舶の環境負荷は自動車ほど大きくはないのですが、港湾は人口の多い大都市にあることが多く、人体への影響を考えると軽視できないものがあります。そのため、船舶の位置を自動識別装置(AIS)で把握し、地図上の動きから速度を割り出して消費燃料を計算します。環境負荷はエンジンや燃料の種類、船舶の形状、貨物の重量などにも左右されるため、それらのデータも踏まえる必要があるからです。もちろんルートの構築だけでなく、低負荷燃料の導入や有害物質をあまり排出しないエンジンへの転換など、環境負荷軽減のための、さまざまな取り組みが行われています。

高速道路と一般道路はどちらが安全か

環境負荷軽減の取り組みは自動車も同様ですが、少し視点を変えて、GISを活用し、ドライバーの安全性を考慮する研究も行われています。例えば、トラックの速度や車体の挙動、ドライバーの心拍数のデータを取り、ドライバーにかかるストレスを分析すると、高速道路に比べて一般道路の方が運転のストレスが大きいことが証明されました。集めたデータをどう活用するか、世界中でさまざまな取り組みが行われています。今後、GISの重要度はますます高まっていくでしょう。

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先生情報 / 大学情報

東京海洋大学 海洋工学部 流通情報工学科 教授 渡部 大輔 先生

東京海洋大学 海洋工学部 流通情報工学科 教授 渡部 大輔 先生

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物流システム工学、地理情報科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

地理や歴史は単なる受験科目ではなく、人生を豊かにする教養です。これらの知識がないと、観光地を訪ねてもその価値がわからないし、ニュースを見てもどこか他人事になってしまい、世の中の動きから取り残されてしまいます。
また、地理の知識と数学的アプローチの融合である「地理情報システム」のように、これからは異分野のスキルを組み合わせ、新しい価値を生み出していく時代です。自分は文系だから理系だからということにとらわれず、両方の長所を組み合わせ、さまざまな可能性を模索してください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
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東京海洋大学に関心を持ったあなたは

東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。