AIやビッグデータを活用した被害予測と効果的な防災対策

AIやビッグデータを活用した被害予測と効果的な防災対策

被害予測と防災対策

地震などの自然災害に対する防災対策としては、建物の耐震補強や避難経路の検討など、さまざまな取り組みが必要です。対策を検討する際に重要となるのが、被害予測です。「この地域で震度7の地震が起きたら、こういう被害が起きる」という予測が具体的にできれば、想定される被害に対して効果的な対策が取れるからです。最近では、AIやビッグデータを活用して、より高度な被害予測をする研究が注目されています。

AIを活用した地震時の道路通行止め予測

2024年の能登半島地震では、道路の寸断により多数の孤立地域が発生しました。数日間にわたって水や食料が不足すれば、生死にかかわる場合もあります。地震時に寸断する可能性が高い道路をあらかじめ把握できれば、優先的に対策することができます。
従来の道路通行止め予測は、1kmあたり何カ所ぐらい起こるかという「箇所数」を予測するものでした。しかし、具体的な対策を検討するには、どこで起こるのかという「位置」を予測できた方が役に立ちます。AIの一つである機械学習という方法を使うと、地震の震度情報に加えて、道路の長さや車線数、沿道状況などさまざまな道路情報も考え合わせて、従来の方法ではできなかった通行止めが起こる場所を予測できるようになります。

ビッグデータを活用した避難者数の実態把握

災害時の避難者支援対策の検討には、避難所ごとの避難者数を予測できれば有効です。近年の地震では、避難所周辺で車中泊する人も多く見られますが、どのくらい人数がいるのかを自治体では把握できず、支援が十分に行き届かないことが問題となっています。
そこで、2016年の熊本地震を対象に、携帯電話の位置情報のビッグデータを用いて被災地域での人口分布を把握する試みがされています。この分析によって、避難所周辺には性別・年齢別でどのくらいの人たちがいたのかが明らかになりました。
このようなAIやビッグデータを活用した研究は、将来起こる南海トラフ地震などの被害予測や防災対策へつながっていきます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

関東学院大学 理工学部 理工学科 土木学系 教授 鳥澤 一晃 先生

関東学院大学 理工学部 理工学科 土木学系 教授 鳥澤 一晃 先生

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都市防災学、災害リスク工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

2022年度から高校で「情報」の科目が必修となり、国語や数学などの科目と同様に、基礎学問として位置づけられました。今後は情報に興味を持つ人も増えてくるでしょう。ただ、情報技術を社会で役立てるためには、それとは別の分野の専門性がある方がいいと思います。例えば、防災の課題をAIで解決するには、まずは防災に関する知識が必要であり、情報技術は課題解決の手段なのです。ある分野でどのような課題があり、どういう解決法が必要なのかを知ってこそ、情報技術を役立てることができるのです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

関東学院大学に関心を持ったあなたは

1884年(明治17年)、関東学院は横浜山手に神学校として創立されました。長い歴史と伝統をもつ関東学院はキリスト教の優れた思想、芸術、奉仕の精神を礎に、校訓「人になれ 奉仕せよ」のもと広く世の中に貢献できる学問・知識を身につけた有能な人材の育成を目指してきました。現在では、文理にわたる学部を擁する総合大学へと発展。伝統に裏打ちされたキャンパスライフサポート、学修サポート、キャリアサポートの3つのサポート体制で学生一人一人に合わせた支援をこれからも行っていきます。