位置や地図情報を活用する技術で可能なことは?

位置や地図情報を活用する技術で可能なことは?

GPSの精度と地図情報への利用

1990年代のカーナビゲーションは、地図上と実際の位置に100mほどの大幅な誤差がある状態でした。「敵国に軍事利用されないように」というアメリカの意図で、あえてGPS(全地球測位システム)の精度が下げられていたためです。そのため、GPSの精度をどうやって高め、正しい位置に少しでも近づけられるかというのが当時の主な研究内容でした。しかし、2000年に当時のアメリカ大統領、ビル・クリントンがGPSの制限を撤廃するよう指示したことで、研究の方向性も大幅に変わりました。精度の正確性を地図情報に利用し、その活用用途を広げることも研究のひとつとなりました。

VRやMRの発展で可能になることは

地図情報を利用することで「VR(仮想現実)」や「MR(複合現実)」の技術の発展も見込めます。VRやMRの最大の利点は、世の中にまだ完成していないものや、昔存在していたものを補完し、視覚的に再現できることです。それによって、建設途中の建物の完成形を映し出すことや、邪魔なものを消すことも可能です。例えば、山や道路、ビルなどを実際にそっくり取り外すことは不可能ですが、バーチャルの世界でなら簡単にできます。労力やコスト、危険が生じるような作業や、現実には再現できないような作業もシミュレーションできるのです。

GISでさまざまなサービスが発展する

位置情報を管理・統合するGIS(地理情報システム)は「自動運転」の分野で注目を浴びていますが、そこで用いられている技術が人間にも生かすことができるのではと考えられています。例えば、メガネ型のウェアラブル端末をつけてもらえば、道の混雑具合や空いている道の案内、さらには災害発生時に安全な場所を案内することも可能になるでしょう。また、空飛ぶタクシーなどでも空中に仮想的な道を構築することも可能となり、安全性を高めることも可能となります。位置情報や画像、周辺の状況といった情報を利用することで、多彩なサービスを提供することも夢ではないのです。

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大阪経済大学 情報社会学部 情報社会学科 准教授 米川 雅士 先生

大阪経済大学 情報社会学部 情報社会学科 准教授 米川 雅士 先生

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地理学、情報工学、電子工学

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メッセージ

受験や大学での研究内容を決めるにあたり、自分の専門分野を決めることは大事です。しかし、得意分野にこだわり固執しすぎることは人生において幅を狭めることになりかねません。よく「理系に進むなら歴史なんていらない」「数学なんて実生活では役に立たない」などと言う人がいますが、勉強する範囲を狭めることは間違いなく人生の損になっています。
幅広い「知識」をたくわえ、さらに「見る・聞く・感じる」という「体験」を積み重ねることで、新しい物事をつくりあげる発想力につながるでしょう。

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