コンピュータは見えないところで耐えている?

コンピュータは見えないところで耐えている?

「フォールト・トレランス」という考え方

最近のコンピュータは、その普及にともない、誰もが安心して安全に使えることを重視した「ディペンダブル・コンピューティング(頼りになる計算・処理)」がキーワードになっています。コンピュータの不具合でメールが届かない、大事なデータが失われるということはあってはなりません。コンピュータの信頼性を高める一つの要素として「フォールト・トレランス(故障に対する耐性)」が挙げられます。これは故障が起こってしまったときに外から見えないように回復させて立て直す機能です。

地震にも対応できる!?

故障に耐えるための手法は二つの原理に基づいています。一つは「冗長化」、つまり無駄を許すことです。例えば、二つのコンピュータに同じ計算をさせて答えあわせをすれば、もしどちらか一つのコンピュータが計算を誤ってもそれを発見することができます。しかし、停電などで二つのコンピュータが同時に停止するような状況があるとすればどうでしょう? そんなときには、故障に耐えるためのもう一つの原理、「分散」が有効になるかもしれません。コンピュータの機能を分散させて配置することで一カ所が故障してもほかの場所の機能でカバーします。例えば同じデータの入ったサーバをA・B地点の2カ所に分散させれば、A地点で地震が起きてサーバがダウンしてもB地点の方のデータは保全されているわけです。

すべては安心・安全のために

現在、コンピュータはどんどん高速化、高集積化が進んでいるので、冗長化や分散というのは一見流れに反しているように見えるかもしれません。しかし、このような技術は安全で安心なコンピュータ環境を作るためには必要不可欠なのです。これまでに蓄積された、より速い、より高機能なコンピュータのための技術や知識を、これからは安心・安全のために振り向けてゆくべき時代になったと言えるかもしれません。そして、ディペンダブル・コンピューティングの技術によってユーザーにまったく故障を意識させないのが一番理想的な形なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東京都立大学 システムデザイン学部 電子情報システム工学科 教授 福本 聡 先生

東京都立大学 システムデザイン学部 電子情報システム工学科 教授 福本 聡 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

情報通信工学、コンピュータ工学

メッセージ

大学進学で専攻を決めるときには一生に関わる選択をすることになります。その中で本来望む道と違う方向に行くこともあるでしょう。私もそうでしたが、やりたいこととやれることが違うことはよくあることです。しかし、やりたい道に進めないことが必ずしも悪いことではありませんから、それを失敗だとは思わないでください。大学に進んでからたくさんの人や考え方に触れ、進む道を考えていくスタンスもありだと思っています。決して環境や人のせいにせず、自分の決めた道を進んでいきましょう。

東京都立大学に関心を持ったあなたは

東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。