耳と指で図を読む! 視覚障害のある人を支える「しゃべる触図」
指と耳で理解できる教材
視覚障害のある学生が学べるように、教育現場では「触図」が使われています。触図とは凹凸がある紙の資料で、線を特殊なインクで凸状にしたり、点字で説明を記したりして、指で触ると内容を把握できるようになっています。ただし読み取るのに時間がかかるため、学生の負担が大きいことが課題でした。そこで耳からも情報を入れられるように、声で説明が流れる「しゃべる触図」が開発されました。
しゃべる触図の仕組み
しゃべる触図には「ドットコード」という一種のバーコードを印刷したシールが貼られています。そこに音声ペンを当てると、ペン内部のスピーカーから声が流れる仕組みです。ドットコードを、触図への印刷でなく後からシールで貼るのには理由があります。触図は専用の機械を使い、線で書かれた部分を膨らませています。しかしドットコードに凹凸が付くとうまく読み取れなくなってしまうため、触図に凹凸を付けた後で、ドットコードを貼り付ける方法が採用されています。
学びや教材作りへの利点
実際に視覚に障害のある学生にしゃべる触図を使ってもらうと、図の全体像を把握しやすくなり、テストの成績が上がりました。全盲の人は点字と線で図を解読しますが、全体像をとらえにくく、位置関係も把握しにくいという悩みを抱えていました。特に鍼灸(しんきゅう)師や理学療法士の養成課程では、体内組織の配置や立体感などをどう感じさせるかが教師の課題でもありました。しゃべる触図によってこうした課題を解決できるようになったのです。
ほかにも全盲の学生と弱視の学生が同じ資料を使って授業を受けられるようになり、教師の教材準備の負担も減りました。従来は、弱視の学生には目で見てわかる資料と拡大した図を、全盲の学生には点字を併記した触図資料をそれぞれ用意する必要があったのです。しかししゃべる触図であれば、目や耳、指など各々に合った方法で情報を把握できます。
学生や教師たちの声に耳を傾けながら、よりよいしゃべる触図を作ろうと研究が続けられています。
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先生情報 / 大学情報
筑波技術大学 保健科学部 保健学科 鍼灸学専攻 教授 白岩 伸子 先生
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